第4章 『かげおくり』誰でもえるゔぃんSS10月
——コンコンッ——
強めのノックが、勇気を振り絞った彼女を遮った。入室を促すと、身体をこわばらせた女兵士が何やら大事そうに抱えてやってくる。
「あ、あの!団長・・お誕生日おめでとうございます!」
押し付けられた箱には俺の瞳と同じ碧いリボンが飾られていた。
「開けても?」
貴族と接するいつもの癖で、口角を上げて目を合わせると顔から火を出す勢いで女兵士は赤面している。室内の一角からやたらと冷たい冷気が流れてきたが、秋も深まったのだろう。気にせずリボンをほどくと、一介の兵士には高額であったであろう菓子が現れた。
「感謝する」
一言そういっただけで、女兵士は相好を崩した。
——君も一緒にどうだ?——
2人きりになってから提案しようにも、最初の女性兵士を皮切りに、次々と男女入り乱れてのプレゼント攻撃にその機会を失ってしまった。
「てめぇ、3分の1は男からじゃねぇか。気持ち悪ぃ」
引き気味のリヴァイを見つけ次第、次の作戦会議の話に移ってしまったのだから、益々彼女と話すチャンスをなくしてしまった。
——クシュン!——
くしゃみが出るとは。最近一気に寒くなってきたからだろうか。風邪でも引いては兵士に示しがつかない。
「すまない、上着を・・」
いつもならば、くしゃみの段階で上着に手をかけていたはずの彼女は、席に鎮座している。声をかけても動かないのは、いつもの彼女からすればあり得ないことだ。
「上着を取ってくれないか・・・」
目が合ってから伝えても、その首をツーンと横に動かすだけだ。
「嫌です」
極めつけはこの言葉。何か彼女を怒らせてしまったらしいが、皆目見当もつかない。
「そうか・・」
自分で上着を羽織る様は、リヴァイ達にはどう映るだろうか?
——てめぇ、そりゃなんて様だ——
それくらいは言われるだろう。
上官として、否、団長として示しがつかないのでは?そうは思いつつ、不機嫌な彼女の姿に困り果ててしまった。