第4章 『かげおくり』誰でもえるゔぃんSS10月
日差しの中に秋の匂いを感じながらも筆を走らせていた。
一人だとこの季節は肌寒い団長室も、横に彼女がいれば不思議と暖かみが増す。夏では感じられない“体温”の存在が触れずとも感じられるこの季節は、嫌いではない。
——君の体温を感じられるのは幸せだ——
気が抜けて口からでた言葉は取り消せなかった。仕事ができつつも気取らず、後輩兵士からの信頼もあつい。
それでいて末っ子ならではの甘えた所を見せる彼女。きっと上手く流せるだろうと思っていたら、書類を整理する手をとめて紅葉より赤く顔を染めていた。言葉にせずとも、互いの気持ちが通じたのが昨日のこと。あの時は一歩踏み込む事もせず、それぞれの部屋へと帰っていった。
そして顔を合わせた今日は、奇しくも俺の誕生日だった。25歳を過ぎたあたりから嬉しくなくなると聞いていたが、いつ死ぬかわからない自分としては、また一つ歳を重ねられた事に喜びを感じている。勿論、公には言わないことだが。
「団長、今日は・・」