第3章 『火照る身体』誰でもエルヴィンSS8月
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——845年.
団長になって初めて行った仕事は、衛生兵部隊のリーダーの任命だった。
敬礼で応える彼女の手は、人を治療し、安らぎを与える手へと変わっており、あの頃のような手癖はなくなっていた。
団長として多忙を極めていると、自ずと病室から足が遠のいていく。それでも、壁外調査後の彼女が最も俺を必要とする時にはただ黙って傍にいた。その頃には、俺の手首を握るようになった手がもどかしそうに動くのを見ては、
「何か困っているのか?」
と不躾な質問をしては
「別に・・」
とあきらめる彼女の声を聴いた。
兵士たちはこの関係に気付いていたのかもしれない。だからだろう、いつもの如く壁外調査後、少し落ち着いてから負傷兵の見舞いに行くと、兵士がざわついた。
「彼女は?」