第2章 『命ある限り』誰でもエルヴィンSS5月
「信じられない、って顔をしてるよね」
笑い声と共に背後に現れたのは長身の眼鏡をかけた女性兵士だった。
「ハンジ・・さん?」
エルヴィンから何度か聞いたその女性で合っているだろう。眼鏡の奥の目は好奇心でいっぱいだ。
「あ、知っていてくれたんだ。ありがとう。エルヴィン、いつも貴女の事話しているんだよ。その貴女がエルヴィンの気持ち知らないって笑っちゃうよね」
ハンジさんはお腹を抱えて笑っている。
うんうん、と首を縦にふり副官はドレスの微調整に入った。
「そうですよ、私も何度もお二人がお店で話している姿を見かけていますが、恋人だと思っていましたから。あの仕事の鬼である団長が唯一時間を作って会う女性ですからね。まだ、気持ちを伝えてないと知ってびっくりです」
一通り笑い終わったハンジさんが、私の目を見て尋ねる。
「で、どうするの?逃げるなら今のうちだよ?」
「はい、できましたよ!あらやだ!綺麗!私の見立ては良かったですね!」
副官の女性が安堵した顔でお腹を撫でている。彼女は安心したときにお腹を撫でる癖があるのだろうか。
その場に立ててある鏡を覗けば答えは一つだった。
「行くよ!?」
ハンジさんと、副官の女性によって開けられた扉の先にはエルヴィンがいる。
驚いた顔の後には、満面の笑みを浮かべたが部下の前だと即座にいつもの彼に戻った。
「すまない。今日しかなかったんだ。いや、本当に綺麗だ」
とりあえずは謝罪の言葉を口にするが心はそこにあらずで、視線は常にドレス姿の私だ。
「お前、俺を迎えによこすから相手は全て承諾済みだと思いきや・・無理やりじゃねーか」
リヴァイ兵長の言葉にも耳を傾けない。