第2章 『命ある限り』誰でもエルヴィンSS5月
小部屋の扉を開けると、見慣れたドレスがハンガーにかけられている。そして、あの副官もいた。
「この度はおめでとうございます」
恭しく頭を下げる女性兵士につられ、頭をさげて祝いの言葉を述べる。
「おめでとうございます。まだドレスに着替えなくていいんですか?」
「本当はよそ行きのドレスでお祝いしたかったんですけれど・・。如何せんバタバタしてすみません兵団服で」
申し訳なさそうに、身体を動かし自身の姿を見ている。
「貴女、お嫁さんでしょ?」
状況が飲み込めない私の顔を見つめ、リヴァイ兵長と同じくあきれ顔で呟いた。
「団長・・貴方って人は。とりあえず服脱いでください」
手際よく脱がされ、下着だけの状態にさせられた。
「団長が!ドレス選びに私を連れて行ったのは!貴女に似合うドレスを見立てるためだったんですけれど!"俺はどれも彼女に似合うと思ってしまって選びきれない"なんていう、惚気まで聞かされてましてね!」
複雑なウェディングドレスを着せながら、口も一生懸命回す。さすがエルヴィンの副官は可愛いだけではなく、仕事もしっかりできるようだ。
「団長も団長であの後私に、次の壁外調査までには私が見立てたドレスを持ってプロポーズすると言っていたのに、してなかったんですね!」
エルヴィンが私に、プロポーズ?そんな訳ない、ありえない。相手はエルヴィン・スミス、私はただのドレスショップの店員。彼には若々しく美しい貴族令嬢だって嫁に貰えるだけの資格がある。そんな彼が私を選ぶわけがないのだ。