第2章 『命ある限り』誰でもエルヴィンSS5月
「あの、リヴァイ兵長が私に何でしょうか?」
不機嫌そうなリヴァイ兵長に恐る恐る聞いてみると、思いもよらぬ答えが返ってきた。
「お前とエルヴィンの結婚式だ」
「え!?」
両目を見開いたまま固まる私に、リヴァイ兵長はあきれ顔だ。
「エルヴィンと結婚するんじゃないのか?」
「彼は副官の彼女と結婚されますよ?ドレスを二人で選びにきました」
兵長は勘違いをされているのだ。恐らくこうだ。ウォールマリア奪還作戦が急にきまり、結婚式を急遽挙げることになった。その参列者として私を呼ぶために、リヴァイ兵長を遣わしたのだ。
「ふふ、兵長は勘違いされています。エルヴィンにはちゃんと可愛らしい副官兼、恋人がいるんです。私は幼馴染で仲良いから、式に参列するために兵長にお迎えをお願いしたんですね。でも、私なんかにリヴァイ兵長を使者は勿体ないですね。あ、そうそう兵長は恋人はいらっしゃって?挙式されるときは、是非私のドレスを使ってくださいね?特別価格・・いや、無料で差し上げます。もうお店は畳みますから」
「・・あの野郎」
そう言ったきり、外の景色を見て私を見なかった。それもそうだ、40超えた女の未練たらしい泣き顔なんて見ている方も辛いだろう。全く恥ずかしい限りだ。式場に着くまでには泣き止まねば、晴れ舞台が台無しだ。
馬車を降りると青空が広がっていた。風が泣き腫らした目に染みる。腫れた目は夜中に読書に夢中になって、寝不足だから‥ということにしておこう。今から私は幼馴染の幸せと、長年共に過ごしたあのドレスの門出を祝うのだ。
急いで飾ったのだろう、僅かだが式場に飾られた花々が放つ甘い香りが会場を満たしていた。参列者席に座ろうとすると、
「そっちじゃねぇ」
リヴァイ兵長に別室に行くように促された。