第2章 『命ある限り』誰でもエルヴィンSS5月
20年このお店で働いていて、沢山の恋人たちに出会った。二人でドレス選びにはしゃぐ恋人もいれば、嬉しそうな女性を横目に辛そうな表情を浮かべる男性もいる。確かに女性の買い物に付き合うのは、男性にとっては苦痛だろう。そんな時、私は言うのだ──どうぞ、男性も一緒に選んであげてください。きっと喜びますから──と。
「おめでとうエルヴィン。幸せになって」
店を出るとき、やっとの思いで伝えた。2人でドレス選びをするよう、応援しなかった自分への罰として。
何かを言いかけたエルヴィンはその言葉を飲み込んだ。
「また、連絡する」
微笑むのが精一杯だ。きっと次の連絡は結婚式の招待状だから。