第26章 ふたつの半月
「…ごめんなさい…最近、姿が見えないので…。
最後…あんなこと言ってしまったし…」
申し訳なさそうに俯く睦。
任務に就いていた3日間。
確かに会えずにいた。
昨日、早いうちに帰っては来たが、
睦に会いには行かなかった。
約束なんかしていない。
…カケヒキってヤツですか。
会わねぇ間に、
俺のことで頭いっぱいにしてりゃいいと思った。
あんな別れ方をして、
こいつが気にしていないワケがなかったから。
「ヘェ…」
でも俺だって気にしていないワケじゃなかった。
そりゃそうだろう。
嫌いって言われたの!
大嫌いって!
ショック受けないワケないでしょ!
いくら俺だって!
……いや、
もういい。
終わった事だ。
もういいと思いながらも
今こいつと顔を合わせるのはツラいモンがある。
「あの…ごめんなさい」
……
「ごめんなさいって言われてもなー。
あんなん言われたら
もしかして本心かもしれねぇなとか思うだろ。
俺って繊細だし」
「ぇ……ご、めん、なさい…」
あら、冗談も通じねぇ。
茶化したらだめなヤツか。
「…うそうそ。いいよ、
それだけの事を俺がしたんだ。
気にするな」
ひらひらと手を振って
どうという事も無いと伝える。
それでも困ったような目を向けてくるから、
「…なんだよ、いいって俺が言ってんだよ。
別に繊細じゃねぇし大丈夫だぞ」
本心を伝えてみるのに、
なんだかもじもじしてその場に佇む睦に
「何の用?」
なんて訊いてしまった。
あれ、今のは誤解させるような言い方だったか?
と、
その通りだったようで、
睦は青ざめて立ち尽くしていた。
あぁ、だめだ。
違うんだって。
「…ちょっと、待て。な?
俺だってな、時間が必要な時があんだよ」
ヘタな事したくねぇと思うだろ。
「わかったら、もう行きな。大丈夫だから」
俺の言葉に、更に青ざめて
なんなら泣いてしまいそう。
そこで俺は、
その手に土産を下げている事に気がついた。
やべ…!
「来てくれたんだよな!」
慌てて取り繕うが
「…帰りますぅ…」
悲しそうに踵を返す。
「あぁ待て睦‼︎
あがってって、是非!」