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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第26章 ふたつの半月





急な大声に、ただ事じゃねぇのを感じて
睦の元へ思わず駆け寄った。

後ろから囲うように膝をつき覗き込むと
睦の白魚のような左手を伝う
真っ赤なもの。

地面に落ちた剪定ばさみ。
右手で左手を握り込み小さく震える睦。

「ばっ…かやろ!」

「う、わ…ッ‼︎」

すかさず睦を抱き上げて
縁側にゆっくり座らせると
懐から出した手拭いで
その傷口を塞ぐように握りしめてやった。

「ボケっとすんな!」

「…ごめんなさい」

睦はシュンと下を向くが
俺はおさまらなかった。

「指が落ちてたかもしれねぇんだぞ!
ごめんじゃ済まねぇ!」

手拭いを少しだけ開いて傷口を確かめる。
人差し指の付け根がぱっくりと口を開き
真っ赤な血がどくどくと噴き出していた。

あーあ、…

再び手拭いでくるみ、
ぎゅっと握る。

きっと、ズクズクと痛むはずだ。
睦は顔をしかめて痛みを堪えている。

「頼むぜ睦…
キズでも残ったらどうすんだよお前…
お前になんかあったら俺、耐えらんねぇよ」

祈るようにその手を自分の額に当てる。

「…宇髄さん…?」

何が宇髄さんだ、このやろうめ。

「心配さすなって言ってんの!
女がこんなキズ作りやがって…
しかもこの俺の目の前で!」

そうだ。
腹が立つのは自分にだ。

こんなにそばに居ながら、
俺はこいつにケガを負わせた。
それが何より許せねぇ。

「……痛むか?」

睦に向けて怒っていると、
勘違いしていたのだろう。
急に気遣いを見せた俺に、
涙を零しそうになりながら
俯いてかぶりを振る。

…わかるよ。
睦は、できる限り
他人に心配をかけないようにしてきたんだ。
でなきゃ、
あんな所でひとり泣いたりしないだろう。

それをこんな大失態。
泣きたくもなるよな。

痛ぇのは睦だ。
俺じゃねぇ…

「…大声出して悪かった。
びっくりしたよな」

睦が泣きそうな理由に
気づかないフリをする。
俺が原因だと、いう事にする。




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