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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第26章 ふたつの半月





私は重箱を元のように重ねた。

「それにしても、あの煮付けは美味かったな」

宇髄さんは
あの味を思い返すようにしながら言った。

「はい、おじちゃんの得意料理ですからね」

そう、海龍もあの煮付けがお気に入り。
今日持って行ったお弁当も、
その煮付けが入っていたのだ。

「また買いに寄らせてもらうわ」

「はい是非…!おじちゃんも喜びます!
じゃあまた明日、重箱を取りに参ります」

「また明日、ね…」

独り言のようにぽつりと呟き、

「楽しかったか睦」

短く私に問う。

「はい!楽しかった。ホントはね、
最初、どうしたらいいか
わからなかったんですけど…
でも宇髄さん、聞き上手だしお話はおもしろいし
安心して過ごせました。
ありがとうございました」

私の答えに

「そいつはよかった。
俺もいい時間を過ごせた」

にっこりと笑った。
お互いに楽しく過ごせたなら
有意義な時間だったという事になる。

「さぁ、暗くなる前に行きな。
送ってやりてぇ所だが、
この後しなきゃならねぇ事があるんだ」

「いえ、そこまでして戴かなくても大丈夫です。
ありがとうございます」

そう言って立ち上がった私を追って、
同じく立ち上がった宇髄さんは
どうやら玄関まで見送ってくれるつもりらしい。

廊下を行く私はやっぱりそこから
庭まで筒抜けのその光景を見ていた。
ほんの少しの好奇心。

「おうかがいしてもいいですか?」

「おぅ」

私の後ろを
腕組みしながらついてくる宇髄さんは即答。

「どうして全部開け放っているんですか?
空気の入れ替え…?」

広いお屋敷だとこうするものなのだろうか。

「あぁ」

ゆったりと歩きながらそちらに目をやり
そんなことか、と少しだけ肩から力を抜いた。

「睦が、安心するかと思って」

「…私?」

「あぁ、締め切って塞がった空間より抜けてる方が
抵抗ねぇかなと思ったからこうしといたんだが…」

確かに。
ここへ入った時、明るい陽光が
いらっしゃいって迎えてくれたような気になった。
怖くも淋しくもないって、
自分でも感じてたと思う…

私のためだった…

「そう…でしたか…」

細かい気遣いが嬉しくて
ちょっと、……。
『ちょっと』なんだろう…?


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