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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第26章 ふたつの半月





「…それは、店員の時のカオだな」

「…店員、ですか?」

「あぁ、まだ遠慮してる。
気遣いなんかいらねぇんだ。
今だけでいいから、俺の友人になってくれ」

友人…

「……はい。わかりました!」

私がにこっと笑って見せると
彼は嬉しそうに微笑み返してくれた。

その設定は、なんとも楽しそうだ。

「私、友達といえる友達がいないんです。
だからちょっと嬉しいです」

「いない?」

「…いません」

「そうか、じゃあ俺が友人第1号か?」

目を吊り上げて笑うその顔が可愛くて…

こんな…ふうに、笑ってくれるなら
私、お友達がんばれるかもしれない。

「ふふ…そうですね」

そう笑ってから、ふと、頭の片隅に
誰かの笑顔を見つける。
……海龍だ。
確かに、海龍は友達だった。
でもいつしか
私の中で姿を変えた…
友達では…なくて…。

「…何考えてる?」

「いえ……ちょっと、昔のことを……ぁ、
何でもありません!さぁ、
ごはん、よそいましょうか。
おじちゃんのごはん、初めてでしょう?」

私はよからぬ想いを掻き消すように
首を振り彼へと向き直る。
今は海龍の事なんて考えている時じゃない。

そう思い直してからの私は、
宇髄さんと2人、色んな話に花を咲かせた。
最初こそ『努めて』なんて思っていたけれど、
努力なんかしなくても
宇髄さんの話の上手いこと。
なんの気兼ねもなく、
会話にのめり込めたのは
間違いなくこの人のおかげだと思っていた。



時間も忘れて話し込み
いつのまにか日は傾き始めていた。

「あ…私そろそろお暇しないと…」

そう思って、
私はテーブルの上に広がる使い終わった小皿を
まとめ始める。

ふと見ると、お重の中はほぼカラだ。

「あの、この中身、お皿にまとめてもいいですか?
そうしたらこのまま持って帰れそうですし…」

わざわざ明日取りに来る手間が省ける。

「あぁ、…いや。このまま置いておいてもいいか」

宇髄さんは私を窺うように言った。

「…そう、ですか?」

「あぁ、フタの出来るものがここにはねぇんだ。
だからこのまま置いといてもらえると
助かるんだが…。
明日の朝には食い切って、ちゃんと洗っとくから。
取りに来させる手間は申し訳ねぇが…」

「いえ!それはお気になさらず。
ではこうして、…置いておきますね」


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