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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第26章 ふたつの半月





「…はい…、」

テーブルから目を離せないまま
すとんと腰を下ろした。

その途端、座布団の柔らかさに驚く。
ぱっと見下ろすと
自分の足が少し埋もれていた。
こんな座布団あるの…

気のすべてがテーブルの上だった。
何て卑しいのかしら…恥ずかし…

ふと視線を感じて顔を上げると
頬杖をついてこちらを見られていた。
ぱちっと目が合った瞬間、

「…好きなのはメシよりも甘味」

穏やかな微笑みを湛えながら言う。

「…え?」

「こんな座布団があるんだビックリー」

「………」

なに…

「…なんてな、」

なんで…!
私なにも言ってないのに…

呆然として彼の事を見つめていると、
ニヤリと口の端を引き上げて

「…なんでわかったの⁉︎何も言ってないのにー」

私の胸の内をぴたりと言い当てる。

「な、なんなんですか⁉︎怖い‼︎」

「当たってるだろ?
あんた、気ィつけた方がいいぞ。
全部顔に出てるからな」

カラカラと笑って
おもむろに箸を手にしたその人は
小皿にお重の中身を取り分け始めた。

「そんなにですか⁉︎」

「そんなにだな。まぁ、…可愛いモンだ」

言いながら私にその小皿を差し出した。

可愛い、と言われた真意と…
それよりも
そんな事をさせてしまった申し訳なさと、
小皿を受け取らなければならない焦り。

すべてがすべての邪魔をして、
私は何をしたらいいかがわからなくなった。

「おいおい、落ち着けよ」

あぁ、ほら呆れられたし。

「は、はい…あの、私がやりますので…」

「ん?いや、いいよ。
客を持て成すのは当然のことだ」

「お客様はそちらです」

「…あぁ、そうだったが、…今はあんたが客だ」

そう言って
またあの優しい笑顔を作る。

「不躾で悪いが、名前を教えてもらえるか?
よそよそしいのは好かねぇのよ」

そう言われて、
まだ名乗っていなかった事に気づいた。

「失礼しました。櫻井睦と申します」

テーブルにぶつからない程度に頭を下げて
私は何だか、居心地の悪さを感じていた。

名乗って、…それから?
こうやって、かしこまるのはホントは苦手。
でもお客様に失礼な事をするわけにもいかず。
それでなくても、
自らここまで上がり込んだのだから…。


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