第25章 時間を超えて。
私は強く、睨みつけた。
「私は…もうあの人にしか触れられたくない。
彼にしか抱かれないって…誓ったんだ…ッ」
この人は、私の言った言葉の意味が…
わかっているのかな…
目の前の天元からのキスを受けながら
私はぼんやりと考えていた。
「…この口で、そんな事を言うのは許さねぇ…」
「っん、うぅ…!」
拒んでも拒んでも、
どんどん私の心を侵蝕していく。
違うのに…。
ダメなのに。
でもこの声も、私のほっぺたを撫でる手も
あの人とまったくおんなじで…
許してしまいそうになる。
流されてしまいそうになる。
深まるキスを思い切り押しやった。
「悪ィな。お前が何と言おうと、
睦は俺のモンだ…」
そうして、私の首筋にうまる天元…
「ひ、やぁ…っ!」
「お前が俺以外見てるかと思うと
どうにかなっちまう…気が狂いそうだ」
「天元…!天元お願いだから…やめて!」
必死に逃げようとする私を全身で押さえ込んで
「睦!」
その手を止めさせるだけの強い声。
彼の思惑通り、全身を強張らせた私に
「今だけでいい…頼むから…俺を、愛せ」
…まさかの、お願いを返された。
俺を、…って…
そんなこと言われても…
そうだ。
そもそもが違うんだ。
この人は私の事を、もう自分のものとして見てる。
だから…
だからって私にそれを求めるの…?
「そんなの…」
「俺を、見ろ」
言われるがまま、彼の顔に
背けていた目を向けた。
…ずるい。
まるでこの声に逆らえないのを知っているよう。
「俺と、何が違う…?」
淋しそうな呟きに、
どくんと強く心臓が脈打った。
「まぁ…傷モンだけどなぁ…」
右手で目元を押さえながら
冗談ともつかない事を言うから、
「……ふ、」
つい笑ってしまって…
張り詰めていたはずの空気がふわりと溶けた。
もう…
何なのよ、この人は…。
「…んだ、笑うのか?」
わざと、笑わせたくせにそんな事を言う。
わかってるよ、私に拒まれたら
強く出切れないのよね?
優しいってこと、
ちゃんと知ってるよ。
「あなたの睦が、
もし未来の天元に抱かれて帰って来たら、
あなたは許してあげられる…?」