第25章 時間を超えて。
その間、天元が何をしていたかというと、
…さっきの部屋でしていたように、
布団を敷いたのだ…
何をさせようというのだろう。
…この感じからして、
寝かしつけ…?で、済むとは思えない。
掛け布団をめくった状態で、
さぁおいでと言わんばかりに敷布団をポンと叩き、
私に微笑みかける天元…
警戒しながらも
そろそろと彼の元へと進む。
「俺もなぁ、割と飲んだんだよ。
あいつらみてぇに潰れはしねぇが…
介抱してくれてもバチは当たらねぇだろ?」
「あぁ……うん…」
私は彼の真向かいに正座をした。
…介抱、と言われても。
「具体的に何をすればいいの?膝枕?」
さっき、不死川さんの髪を撫でた時に見せた
彼の顔を思い出す…
少し乱れる鼓動。
…あんな顔をされて、
私だって何も感じないわけじゃない。
そんな事を考えて、
私が目を伏せた瞬間を狙った天元が
素早く私を押し倒した。
「…っ」
衝撃が無いように、
両腕で抱え込んでくれる気遣いはさすが。
でも…。
「添い寝、してくれ」
「…わかった、…から」
彼の胸を押しのけようと力を込めた。
でも動かない。
彼は、動く気がない。
「天元…下りて、重たい」
「睦…」
私の願いを邪魔するように
天元は私の名前を呼んだ。
キスをされるのかと思うほど顔を寄せられて
それを拒まなきゃと思い、私は顔を逸らす。
すると、それを追って
天元はぴったりと私についてきた。
右を向いても左を向いても
それはずっとおんなじで…
「…や、だ…やめて」
弱々しく音を上げる私に
「なんもしてねぇだろ…?」
そっと囁く。
なんなのこの状況…
無理だ。
この声…
片方とはいえ、この目も…。
私の愛しい彼と重なっていく。
「天元、お願い…」
私は更なる言い訳を求めて、
「背中に…帯が当たって痛いの…」
いい材料をみつけた、
と思った。
優しい彼なら、痛い、という私の言葉に
反応しないわけがなかった。
『あぁ、そりゃ悪かった』
そう言って、
すぐに退いてくれるはずだったのだ。
だから、
「なら解け」
そう言われて腕を背中に回された時には、
くらりと眩暈がしたものだ。
「ほどかないで!どいてくれればいいから…っ」
そう、必死に訴える。