第25章 時間を超えて。
何となく、私に任されたような気がして、
「…お酒…もうやめた方がいいよ?」
2人に向かってそっと提言してみる。
「まだ飲めるぞ!」
煉獄さんは元気いっぱいに言うけれど…。
気持ちよくなって、…もっと飲みたいのかな。
「わかってるよ。お酒、強いもんね?
でも煉獄さんの体が心配だな。
お酒はね、少しなら元気になるけど
飲みすぎたら病気になるよ。
私、煉獄さんは元気なのがいいんだ」
私が話した言葉を
まっすぐに聴いてくれていた煉獄さんは
酔っ払っているにもかかわらず
ちゃんと理解してくれたようで、
「そうか!わかった!もうやめておこう。
気遣いに感謝する!」
にこにこと言って、
ぎゅっと私を抱きしめた。
私はその背中をぽんぽんと叩き、
「はいはい、わかってくれて良かった」
隣に胡座をかいている不死川さんの事を見上げる。
「…俺にも同じこと言うのかァ?」
私は煉獄さんを巻きつけたまま
くるりと不死川さんに身体を向けた。
「うん。不死川さんも元気でいてほしいよ。
私の、お兄ちゃんなんでしょ?
ならワガママきいてくれる?」
「そうかよ…」
不死川さんはそれだけ言うと、
正座した私の膝にポスっと頭を乗っけて
気を失うように眠ってしまった。
…ギリギリだったみたいだ。
私の背中に巻きついていた煉獄さんも
いつのまにか眠ってる…。
「…重い…」
私がその重みに必死にこらえていると、
後ろに座っていた天元が立ち上がる気配。
「…酔っ払いの扱いがうまいな睦」
私に寄りかかったまま
眠ってしまった煉獄さんを引き受けてくれた。
肩が軽くなった私は
首だけで天元を振り返る。
「そうかな…、そうかもね」
飲み過ぎのお客さんを止める術。
男の人のプライドを傷つけないように
認めながらやめさせる。
そんな、覚えなくてもいいような事を
身につけさせられた…。
…って、思ってたけど、
役に立ってしまったかも…。
皮肉だわ。
座布団の上に煉獄さんを転がして、
上質な布団を敷いた天元が
更にそこまで彼を運んだ。
…お泊まりか。
と言う事は、おのずと不死川さんもかな?
そう思って何となく見下ろしたその顔が、
起きてる時とはまるで別人…
嘘みたいに優しくて…
私はつい、その髪を撫でてみる。