第25章 時間を超えて。
ひと言では表しきれない事は、
誰も信じたりはしないだろうに
それを恐れずに平気でやるこいつは
すげぇなぁと思わざるを得ない。
「大丈夫か、お前も」
不死川は呆れ顔。
お前、モ、というのが気にはなるが…。
「なぁんで?大丈夫だよ!
ホントのこと言ったのに
何でそんな言い方するの?」
それに食ってかかる睦。
まったくもう…
さっき泣きそうになってたってのに。
「こら睦、おとなしくしとけ。
そんなんでもコッチの睦の兄貴分だぞ」
「お兄ちゃんなの?」
「ソンナンデモってどういうこったァ」
2人は同時にこちらを向く。
あーめんどくさー…。
「はいはいはいはい。
ややこしい話は終わりにして
みんなうちでメシでも食おうぜー」
右腕を不死川の肩に回して
俺との間に睦を挟み、
左腕を煉獄の肩に掛けてから
強引に歩き出した。
「くっつくな、気色悪ィ!」
不死川は離れようと身をよじり、
「わわ、転んじゃうよ!」
睦は俺にしがみつく。
「いいな!美味いものをご馳走になろう」
煉獄はにこにこついてきて、
それぞれの反応を楽しみながら
俺は勝手に屋敷へと足を進めていった。
ごはんを食べる、
なんて言っておきながら結局は酒盛りだ。
ただ、天元は上戸、
残り2人は下戸…
最初こそ楽しげに飲んでいた3人だが
一定量を飲んだあたりで
不死川さんと煉獄さんが
酔っ払い始め、会話らしい会話ができなくなった。
「睦!酒はもうないのか‼︎」
煉獄さんの大きな声は更に大きくなったし、
「声がでけェ‼︎耳が悪ぃのかァ‼︎」
不死川さんは気が立っているのか
煉獄さんの耳を強く引っ張った。
「不死川!まだ飲めるか!」
言いながら、
仕返しとばかり不死川さんの耳をねじり上げた。
「いってェ!おうマジでやんなァ‼︎」
「睦!酒はあるか‼︎」
……大丈夫かなぁ?
その思いを込めて、
私は天元に目だけで助けを求めた。
その視線を受けて、
テーブルに頬杖をついてこちらを眺めていた天元は
ふわりと笑って見せた。
……なんの笑顔?
かっこいいだけなんですけど。