第25章 時間を超えて。
「どういう事だ」
「おかしくなったワケじゃねぇってコトよ」
「2通りの性格があるのか?」
「いや、そうじゃなく…。
遠い孫が、遊びに来たみたいな…?」
「……よく、わからないが。
大丈夫という事だな?」
わからないながらもわかってくれた煉獄は
くるりとこちらを向き、にこっと笑った。
「あぁ、そういう事だ」
だから俺も、にこりと笑ってみせた。
いろいろをすっ飛ばして
理解を示してくれた事に感謝しながら。
「コラ睦、
まさか泣くワケじゃねぇよなァ…?」
窺うような不死川の声で
俺はふと、そちらへ目を戻した。
「泣くワケないし」
明らかに強がって、
睦は眉を寄せた。
…こいつにとっちゃ、
痛ぇんだろうなぁ。
人が傷を負ってまで闘う…、
そういうのとは無縁の暮らしをしてるって事が
手にとるようにわかる。
だって、古傷を見るだけで
あんなに泣き出してしまいそうな目をしやがる。
そんなになるなら、
見なきゃいいのに。
「睦、そんなモン痛かねぇから」
慰めるような物言い。
まぁ睦には、
さすがの不死川も強くは言い切れねぇようで…
「手ェ離せ」
自分の腕を抱きしめたまま泣きそうになられちゃ
どうしたらいいかわからないらしい。
優しいからねぇ、さねみんは。
「オイ」
「普通にしてたらこんな事にはならないでしょ?
もう傷が増えないといいね」
「…お前」
思いがけない言葉を口にした睦に
目を見開いて、
不死川は
何故か俺に目を向けた。
「…なによ」
「…こいつ、睦なんだよな?」
「他の誰に見えんだよ」
プッと吹き出して笑ってやると
ムッと眉間にシワを寄せ
「いつもの睦にゃ見えねえなァ」
探るように睦を見下ろした。
「そうかもな」
せっかく答えを濁したというのに、
「いつもの私じゃないもん」
睦は睦で
隠すこともなく事実を曝す。
「お前はちょっと隠せよ」
「何で隠すの?」
「はいはい」
俺が軽くあしらっているというのに、
「じゃ誰なんだよ?」
不死川が追求した。
「さぁ…?未来から来た睦?かなぁ」