第25章 時間を超えて。
…どうしたのだろう。
そんな事よりも!
「道案内、よろしくお願いします!」
私は杏寿郎さんの腕に自分の腕を絡めて
「あっち?それともこっち?」
指差して確認する。
杏寿郎さんはギョッとしてその腕を見下ろし
「どうしたのだ君は」
「どうもしないよ。早く!どっち?」
焦れてぴょんぴょん跳ねる私を
品定めでもするかのように眺めている。
「……あ!ほら、お礼ならするから!
何がいい?カラダ?」
「睦っ!」
ぴょこっと背筋を伸ばし
目いっぱい驚いた杏寿郎さんは
「そんな事を、間違っても口にするものじゃない!
君は今その事で大憤慨したところだろう!」
私を叱るような物言いをした。
…あ、そうか…
そうだよね、普通…そんなこと言わないよね。
「うん…ごめんなさい…。もう言いません…」
しゅんと俯いた私に、
「わかってくれたならいい!
自分を大切にしなさい。君はもう、
1人ではないのだから」
杏寿郎さんは優しく声をかけてくれた。
「1人…」
「あぁ、守るべき男がいるだろう?」
にこっと笑われて、私はぼんやり考える。
天元の、事かな。
きっと…いや、絶対そうだよね。
私がちゃんとすることが、
天元を守る事になるんだ。
そんな事、もうわかっていたはずなのに
私が差し出せるものなんか、
カラダくらいしかないと
昔の考えがたまに顔を出してしまう。
天元が大切だから、
もうやめようって思ったにも関わらずだ。
あーあ、まだまだか…。
私は大きく首を振り、
妙な考えを吹き飛ばす。
「わかったか?」
やっぱり優しく言ってくれる杏寿郎さんに
「うん!わかったよ。ありがとう」
微笑んで見せた。
「では行くか!」
私の考えが纏まるまで待っていてくれたのかな。
…そんな事を、ふと考えた。
「だァから!厄介ごとを持ち込むんじゃねぇよ!」
「万が一って事もあるだろ」
「知るかァ」
「知るかじゃねぇよ。何かあってもいいってのか」
「だいたいてめェが
見張ってねぇからだろうがァ!」
肩を怒らせながら歩く不死川は
まぁ文句たらたら。
睦が姿を消してから数時間。
俺は焦っていた。