第25章 時間を超えて。
ほんとのって…。
お前だって本当の睦だろうに。
俺に、気を遣っているのが丸わかりだ。
「その何の根拠もない前向きなのは
一体どっから来るワケ?」
呆れるほど、元気だな。
「わかんないけど…。
私が元の時代に戻りたいんだから
戻れないワケがないの。
だからそれまで、私で我慢してね!」
よろしく、とでも言うかのように
俺の腕にしがみつく。
それも、左の腕に。
もう、隠さなくてもいいよと言われたようで
俺はまた、少し笑った。
「ちょっと待って、…これ全部?」
寝巻きの帯に手を掛けた天元に
慌てて声をかけた。
天元は無言で私を見上げる。
……
「これは夜着だ。襦袢に着替える。
そっからの着物」
「えーと、…もしかして一旦全部脱ぐの?」
「当たり前ぇだろ」
いや、そんなしれっと言われても…。
「めっちゃ恥ずかしいんですけど」
「お前、俺の嫁」
ちょんと鼻先を突かれる。
見慣れてるって言いたいんでしょ。
「わかってるよ。でも、」
こっちだって、相手は天元だ。
裸なんて見せ慣れている。
でも、なんかこの状況で見られるのは
ものすごく恥ずかしい気がする…
「恥ずかしいの、ごまかしてやろうか」
「え…?ごまかす…」
訊き返しながらパッと見上げると
思っていたよりもずっと近くに天元の顔があって
びっくりした。
一歩引いてしまいそうな身体。
それをぐっと堪えてとどまる。
すると嬉しそうに細められた…
その目に吸い込まれるみたいに、
私は逸らせなくなってしまって
天元も、
…わざとかなぁ、
目に力を入れてるみたいに
強く見つめてくれた。
しゅるっと、
やけに遠くで衣擦れの音が聴こえる。
それでもやっぱり目は逸らせなくて、
するりと、寝巻きが肩から落ちて
ヒヤッとした空気に全身が包まれても
ずっと見つめ合ったまま。
あぁこれは…
私を見ないようにしてくれてるんだ…。
恥ずかしいなんて言ったから、
俺は見てないよって、…
次の瞬間、空気よりも冷たいものが
私の身体に乗せられて
少しだけ肩を竦めた私に
「…腕、通せるか」
そっと囁くように告げた。
…そんな色っぽく言う必要ある?
そう訊きたくなってしまうほど濃艶な声。