第25章 時間を超えて。
かっこいいって…。
こんだけバンバン褒められると
…悪い気はしないが
慣れないせいか居心地が悪ィなぁ…
仕舞いにゃ
ぎゅうっと抱きついてくる睦は
…可愛いが
不信感が募るばかりだ。
誰なんだよ、お前は。
「わかったわかった。
ちょっとほら、先にする事あんだろ?」
「あぁ、お着替え?」
いつもの睦よりも
幼く見えるのはこの言葉運びのせいだろう。
「アレでいい?」
俺の後ろを指差した。
その方向に目を向けると
畳の上に綺麗にたたまれたままの着物一式が
置かれていた。
「…選んだのか?」
「うん、選んだよ」
「……」
「……」
にこにこと俺を見上げる睦。
「着ろよ」
何故着ないか。
「…あのー…」
睦は言いにくそうにしてから
「…着せて?」
小首を傾げ
誤魔化すようににこっと笑った。
「…何だと?」
キセテ?
「よく考えたらさ、私
着方わからないんだよね」
てへっと笑ってみせるが…
「いや、着方が…え?何言ってんの?
毎日着てんだろうよ」
「びっくりだよねー。
天元は、人に着付け出来る?」
「それは…あぁ、」
「よかった」
ホッとして笑った睦は
「私って天元の知ってる人?」
おかしな質問をした。
「大丈夫なの⁉︎」
俺は睦の額に手を当てた。
「俺が睦のこと
知らねぇワケがねぇだろ?
夫婦だぞ?」
「…ふう、…」
目の前の女は
口を尖らせた状態のまま固まる。
「夫婦なの⁉︎やば‼︎」
やば?
驚いて俺に飛び付いて
「私と天元、結婚したの⁉︎すご!やばいって…
あ、違う違う、私じゃないんだ。
でもでも、すごい、おめでとー!」
大興奮だ。
先に着替えを、と思ったが
俺の方が我慢できそうもなかった。
だって自分の結婚を『おめでとう』だぞ?
「おい睦」
睦の背中を
どうどう、と御する。
「なぁに」
「お前は睦なのか?」
真面目な話だという事に気がついたのか
睦はきゅっと表情を引き締めた。