第25章 時間を超えて。
そしてそのまま、
その部屋を後にして…
長い廊下を行った先、
大輪の花が描かれた素敵な襖を
パシーンと勢いよく開け放った。
その中に私をぽいっと放り込む。
「ココがお前の部屋だ。
何が気に食わねぇのかは知らねぇが
とりあえず身なりを整えて…
…睦?聞いてるか?」
「……きれいな、へや…」
大変申し訳ないことに、
天元の話なんかカケラも入って来なかった。
並んだタンスも、置かれたテーブルも
鏡台も小さな火鉢も、
何もかもがセンスの良いものだった。
それらの価値なんか何もわからない
ど素人の私にさえ
ちょっと良いものなんだろうなぁと窺わせる程
洗練されている。
壁の色は落ち着いた赤色、
柱は黒塗り、畳の縁も揃えた黒色
…
「私の、部屋なの?」
私は、割と…
「あぁ、お前の…睦の部屋だ」
順応性が高い女だと自分でも思っている。
「…違うわ」
そっか…
「違わねぇ」
この天元も、
「違うのね」
きっと別の天元なんだ。
「…違わねぇって」
ホラ、言ったでしょ天元?
「うん、違わないけど…違うのよ」
前世って、…
生まれ変わりってあるって。
そういう事よ。
「今、いつ?」
夢なら夢で構わない。
「いつ?今日がいつなのかって?」
天元が指差した先に、
太い柱に打ち付けられた日めくりがあった。
そこには『正大』と漢字で書いてあり…
「せい……だい」
私の視線を追って日めくりを見た天元は
「…大正だな」
バカにする事なく優しく教えてくれた。
「大正かぁ!」
そうかそうか。
私でも知っている。
昔は横書きの場合、右から読んでたって事くらい。
………
「大正なの!」
「大丈夫かお前」
「うん、大丈夫!流れに身を任せるタイプなの!
ね、天元も着替えるの?早く着替えして」
私はまだ廊下に突っ立っていた天元の腕を取り
部屋の中に引き入れた。
「はぁ?俺?ここに俺の着替えはねぇぞ?」
「あぁ、そうか。私の部屋なのか。
天元の部屋はどこ?」
「……あっち。つうかお前なに?
今度は何遊びを始めたんだ」
「いいから!早く着替えて見せて!」
憧れの、着物姿。
早く見たい!