第25章 時間を超えて。
力いっぱいその腕に抱きつくと
寝ていたはずの彼は
気がついてくれたのか、
仰向けだった体制を
コロリとこちらに寝返らせて
ぎゅうっと抱き寄せてくれた。
あったかい胸に抱かれ
ホッとした私は、また眠りに…
……あれ…?
布団、だよね…
私たちソファにいたはずなのに…。
ベッドまで運んでくれたのかな。
でも天元、服着てる…?
私も着てるっぽい。
わざわざそんな事、してくれるだろうか…
私は色々考えながら、
無意識に彼の服の感触を
スリスリと確かめていたようで…
「……睦…?起きてんのか」
囁きに近い声で彼が私に訊いた。
「…ん…」
寝起きなのと、昨夜啼き過ぎたのとで
まともな声が出せない。
「寝ぼけてんのか?…可愛いな」
愛しげに囁いて私のおでこに唇を落とした。
くすぐったくて身動ぎすると
私が離れていかないように
更にぎゅうっと抱きしめられる。
「寒ィんだろ?もっと来いよ、隙間ができる」
うん…あったかい…
「…りがと…」
私の声を聴いた天元は
「…随分と掠れた声だな。
風邪でも引いたんじゃねぇだろうな?」
心配そうに声をひそめた。
「かぜ、じゃない…、天元が昨夜…
あんなに……つこくする、から…」
眠たかったのを何とか堪え、
掠れ切った声で、私は天元に訴える。
すると
私の背中をあっためるように
さすってくれていた大きな手がフと止まった。
「…何言ってんだ、…」
放心したような声を上げる天元。
え…?
なんかおかしなコト言ったかな…
「だから、あん、なにしつこく…する、から」
繰り返し言った私の耳に届いたのは
信じられないひと言。
「昨夜はおとなしく眠ったろ」
……。
いや、おとなしくなんか眠っていない。
間違いなく、激しくえっちした。
それを、忘れた…?
そんなバカな。
「天元…?」
少し不安を感じ、私は瞼を開けた。
そこに広がる光景を
私は信じられない気持ちで見ていた…。
だって…
「……ここ、どこ…⁉︎」
全く知らない場所だったのだ。
ベッドじゃなくて
広い部屋の畳の真ん中に敷かれた高級そうな布団。
天元の背中にはまだ薄暗い障子。
私の背中を振り返ると、
これまた高級そうな模様を施した襖。