第25章 時間を超えて。
「っあはは、何でよぉ!」
俺の胸をぺしっと叩いて
睦は声を上げて笑った。
余計なこと考える必要なんてねぇのに。
「で、どんな話で俺を笑わせてくれるって?」
「違うから!だって夢で見るんだ。
着物姿の天元」
さっきとは打って変わって
睦はサラッと言ってのけた。
やればできんじゃん。
…ん?
「夢に見る?」
「そう」
「それは、願望?」
睦はうーんと眉を寄せた。
「別に…そんな願望ないと思うけど…。でも」
睦はぎゅーっと俺にだきついて
「すっごくすてきだった。色っぽくて」
うっとりと呟いた。
あらら。
「そんなコトいわれたら、
着ようかな、とか思うじゃねぇか」
「え?着るの?」
ぱっと上げた目はキラッキラ。
「お前も着るなら着る」
「私もってないもん」
「俺だって持ってねぇし」
少し目線を落とし、
「そうだよね」
つまらなそうに言った。
「じゃ何であんな夢見たんだろ」
「さぁねぇ…。つうかそれが
何でそこまで気になんの?」
何となく思った事を口にすると、
自分でもよくわからなかったようで
ぴたっと動きを止めた。
「何でか…めっちゃ気になるの…」
首をひねりながら続けた。
何でかな、と目が語っている。
……。
「なぁ」
何となく腑に落ちない俺は
睦の身体を
全身でソファの背もたれに押し付けた。
「なぁに」
俺の肘に頭を預けたままの睦が
するりと抱きついてくる。
……
「俺じゃダメなの?」
「ダメ?じゃないよ。どういう事?」
「ソッチの俺の方がいいか?」
「……」
睦は少し考えてから、
言われた事の意味を理解したのか
ふふっと笑った。
今日の睦は優しげで、しかも綺麗だ。
…いや、綺麗はいつもだが。
「そばにいてくれる、この天元がいい」
俺とソファの間から少し伸び上がり、
そっとキスをしてくれた。
「自分にまでヤキモチやくの?」
両腕を伸ばし、よしよしと俺の髪を撫でる。
「天元はかっこいいのに可愛いねぇ」
さも愛しげに、
首に抱きついてくる睦がころころ笑った。