第25章 時間を超えて。
「前世って信じる?」
「前世」
何の脈絡もなく睦が訊いた。
メシもフロも終え
それぞれが好きな時間を楽しんでいた時の事だ。
「あるっちゃあるんじゃねぇの」
睦とは不思議な縁を感じる。
何となくだが、
それっぽい事なんじゃないかと考えた事が
ないわけではなかった。
「割とロマンチストだね」
バカにするでもなく軽く頷いて
俺の隣、ソファにどさっと座った。
「生まれ変わりとか?」
「…あぁ、ない、とも言い切れねぇような…」
「運命、的な」
しつこく訊いてくる睦。
「何だ急に。どうした」
こいつこそ、
そんなロマンチックな事を
言うような女には見えねぇ。
それが急に、何なんだ。
「んー…別に」
「別に?」
そうは見えない。
賑やかしのため、
ムダにつけていたテレビを切り
睦の方へ身体を向けた。
背もたれに付いた肘に
睦がごく当たり前のように
頭を乗せる。
「…私ねぇ。天元に助けてもらったでしょう」
「んー…あぁ」
あまり正しい表現ではなかったので
俺は曖昧な返事。
助けたつもりはない。
好きなようにしただけだ。
「私はさ、こんなにうまいこと
天元に見つけてもらえて、助けてもらって
…もう決まってたんじゃないかって
思う事があるんだ」
「へぇ…」
子どもっぽいというか、
女らしいというか…
何にせよ可愛い考え方だ。
ふとこちらを見上げた睦に、
にこりと微笑んでやると
少し言いにくそうに顎を引き、
「ねぇ……着物なんて、着たことある?」
目を逸らした。
「着物ォ?」
着物…。
「…成人式?」
「そんなに立派なのじゃなくて。
普段着?みたいな…」
「普段着の着物…?」
何を言い出すのやら…
「んなもん着たことねぇな…」
「そう…よね」
「何の話よ」
訊いても睦は
目を逸らしたまま口を閉ざしている。
「おーい」
睦の視界に入るように、
視線上に顔を覗かせた。
嫌でも俺の顔を見た睦。
やけに神妙な面持ちだ。
「笑わないでね」
「そら絶対ぇ笑うわ」
「…っ!」
睦は息を詰め、目を見開いた。