第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
ぽんぽんとアシルの背中を叩いて促すと
ジャナから目を逸らさずに
一歩を踏み出した。
「行ってらっしゃーい、ジャナ」
私が手を振ると
「えッ⁉︎なんですか?」
急に話を振られたジャナは
戸惑いを隠せない様子だった。
「ジャナ、今日は俺に付き合って」
「はい⁉︎私はまだ…」
「睦がもういいって。おいで」
アシルはジャナの手を握りドアへと向かう。
「お待ち下さい、…え、睦様ぁ…!」
悲痛な叫びを残して、
私の部屋のドアはバタンと閉まった。
残された私と天元。
私は大満足。
私の好きな人たちが仲良くなれば
環境はもっと潤うのだから。
「…どういうこと?」
「アシルは私の事なんか好きじゃなかったって事」
「好きだったろ」
「色恋なんかできる子じゃないのよ。
天元が、自分にないものを持ってるのが
許せないだけで。相変わらずブラコンだね」
「…え…じゃお前ジャナを売ったのか」
天元はが呆れたように言うから
「そんなわけないでしょ!」
私は食ってかかった。
「ジャナは私の大切な友人なのよ?
…でも、ジャナはつらい事があったみたいだから
そういうの忘れて欲しかったんだ。
アシルなら、いい話し相手になってくれるかなって」
つらいことも
誰かと共有すれば
半分ずつになるかなぁって…
独りよがりだったかな…
「…そうか。お前、あの侍女のこと
大好きだもんな」
優しくよしよしと髪を撫でてくれる。
「そう。しかもパン焼くのが
ものすごく上手なの。天元も食べてみる?」
すっかり冷めたミルクパンをひとつ
手に取って見せた。
「んー…」
立ったままパカっと口を開ける天元を
「…食べる時は座りましょう」
さっきまで私が座っていた椅子に
腰掛けさせる。
「はいはい。じゃお前も座れ」
私をぐっと引き寄せて
自分の膝の上に座らせた。
「……ここ?」
「ご不満ですか」
「…いいえ、」
小さめのパンを半分にちぎり
天元の口の中に放り込む。
もぐもぐした天元は
「うま…」
目を見開いた。
「ねー⁉︎」
ジャナのパンを褒められて
私はとっても嬉しくなった。
その半分を自分で食べて
「おいしー」
私は大満足だ。