第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
「違う」
「じゃあ、
お兄ちゃんが自分よりも他の人を大切にするのが
許せないのかな…?」
私の後ろにいる天元が
動揺しているのを感じた。
ほんとに気づいていなかったのか…。
弟に対しては発動しないのかな、
あの、何でも察してしまう鋭さは。
「子ども扱いするな。
俺は睦の事が好きなの」
「そうかもね…。
でも…優しくしてくれたお姉さん感覚よね?」
「違うよ、」
違わないな、その顔は。
悔しいだろう
すべてバレて。
私をなめるからだぞ。
「天元から奪えるわけないでしょう?
私に気持ちがないのなんか丸わかりだよ」
「なんで?だってうっとりしてたよね?」
「ゔ…っ…、ま、まぁほんの一瞬…
不意打ちはズルいよ。でも、わかるんだ。
気持ちってね、伝わっちゃうものなんだよ?
言葉だけじゃないの。
そこに気持ちが入っていないと響かない」
アシルは戸惑ったように目を泳がせた。
本当に、私に惚れたと思っていたのかもしれない。
そうかぁ…。
「ねぇアシル」
「…なに」
機嫌悪ぅ…
急に子どもになったみたいだ。
「アシルにね、ぴったりな人、知ってるよ」
私がそう囁くとアシルはぴくりと反応した。
…悪魔の囁き。
「……」
興味深そうに私を見下ろすアシル。
よしよし、惹かれています。
「あそこに立ってる子」
私は口元に手を添え小さな声で言い
ジャナを指差した。
「…ジャナ?」
「知ってるの?」
「睦の侍女でしょ?
たまに話したことある」
「知り合いなの?じゃあ早いかも。
あの子、すごくいい子だし、
アシルの話、ちゃんと聞いてくれるよ」
さっきの、放っておかれる話。
それから料理が上手なもの同士。
その辺りからして
きっと話が合うはずなのだ。
しかもジャナは聞き上手の天然ちゃん。
そして可愛い。
「絶対アシルにぴったりだよ。
恋人、になるかどうかは別だけど…
ちゃんとした友人になってくれるはずだよ」
アシルは黙ってジャナを見つめた。
その視線を感じたジャナは
ぱっとこちらに目を向けた。
「………?」
訝しげにアシルと目を合わせ
助けを求めるように私に向けて首を傾げる。
私はにこっと笑って見せて、
「誘ってきてもいいよ?
今日はもういいから。ジャナもたまには
しっかり休むといいと思うし」