第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
「睦…?」
それをわかっているかのように
追い討ちをかけた。
はっきりと違う。
そっくりな声にそそのかされても
おんなじような目に熱く見つめられても、
本物はやっぱり全然違った。
何でだろう、…
なんて、そんなこと私にも
わからないけれど。
名前を呼ばれるだけで
こんなに心震わせてしまう人なんて
他にはあり得ないから。
私は、自分の肩の上にいるそのほっぺに
おでこから鼻先を押し付ける。
私が選ぶ人なんてもう決まってる。
泣いてしまいそうなアシルを
守ってあげたいし、そばにいてあげたいけれど、
…私がそばにいたいと思うのは
ごめんね、…アシルじゃない。
私が黙ってアシルを見上げると
何かを察したようにサッと目を逸らし
更に手まで離した。
自由になった手で
巻きついた天元の腕を解く。
逃すまいと、一瞬力を込められたけれど
私がその目を見つめると
それだけでわかってくれたようで、
素直に私のしたいようにさせてくれた。
私は、一転
弱々しくなってしまったアシルのほっぺたをつかみ
しっかりと目を合わせた。
叱られる前の、子どもみたい。
…しょうがない子だね。
「そんなにお兄ちゃんが好きなの?」
悪いと思いながら、
私は笑いを止められなかった。
その様子に、気分を害したのか
アシルはぎゅうっと眉を寄せた。
「そんな顔してもダメよ。
伝わっちゃったもんね、アシルの気持ち」
「睦のこと好きだ」
私の手の中からプイッと顔を逸らす。
まだまだ可愛いな。
「…悪ィ睦、何で俺?」
我慢できなかったのか
天元が会話に割り込んできた。
「えぇ?天元のくせに気づかないの?
こんなに好きなのに、ねぇ?」
アシルを覗き込むと
やっぱり機嫌が悪そうに
「睦が好きなんだよ」
ぼそりと言った。
「はいはい。でも…近道しようとしないで
自分の目でちゃんと見なさい?」
「ちゃんと見た。見て、睦を見つけた」
「…意地張らないの。
天元の前で全部言われたいの?」
「……知らない」
そんな返事を聞いて、
あぁこの人は
天元に知ってもらいたいんだなぁと思った。
結局、
「お兄ちゃんのものが欲しくなっちゃうんでしょ」
それだけの事だ。