第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
天元も黙って聴いていた。
アシルの声は
激しく響く、音楽のようだ。
「王宮から追い出されて
俺はひとりぼっちだと思った。
厄介払いができたんだろうなって思ってた。
でも睦は来てくれた。
俺の事なんか、嫌いだろうに。
怖かったろうに…。何にも気にせずに、
話をしてくれた」
再び私の前に立ち、ぐっと身を寄せる。
「ここを離れた時、もう俺は
放っておかれるんだろうなって思ったんだ。
出来損ないの俺を、うまいこと追い出した王宮は
もう俺を相手にしないだろうって」
そこまで言って、
アシルは悲しそうに視線を落とした。
「放っておかれる事ほど怖い事ってないだろう?
自分がいないことにされるなんて…」
…聴いたことがある。
どこでだったかな…。
ジャナだ。
ジャナも、同じような事を言っていたっけ。
無意識のうちにパッとそちらへ目をやると
ジャナはこちらを見るでもなく、
珍しく険しい顔のまま一点を見つめていた。
「でも睦は俺を認めてくれた。
俺の存在を消したりしなかった。
嬉しかったんだ」
熱く語るアシルが、
いつの間にか間合いを詰めて来て…
私の眼前に迫っていた。
「や、…アシル…ち、かいから…」
顎を引き俯くも、
…触れてしまいそうなほど顔をよせられて
大いに困った。
少しでもと思い、アシルの胸に手を添える。
近くで見ると、
その綺麗な目は更に際立った。
好きな人とここまで似てるだなんて
ちょっと反則な気がする…。
「天元…!」
助けを求めて呼ぶと
私ごと一歩下がってくれた。
でも、アシルの胸に掛けた手は残ってしまい、
逃がすまいとしたアシルに
ハッシと掴まれてしまう。
あ、と思った時には、
その指先にキスをされていた。
「アシル…っ」
慌てて引き戻そうとするが、
その力は想像以上に強くて…
「やだ…、天元、なんとか言って…ぇ…?」
どうにも出来なくなり、
更に扶け(たすけ)を求めて顔だけ振り返ると
思い切り口唇を合わせられた。
「んん…⁉︎」
殴ってやろうにも
両手はアシルに握られたまま。
振り解こうとしたって、
せめてものアリガタイお心遣いなのか、
大きな手で口元を覆い隠すように
ほっぺたを包まれていては
私にはどうにもできなかった。