第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
「なに」
「…人前だから…」
背中側から巻きついた長い腕に
手をかけて離すように促す。
「そうだよ天元。
俺に話をさせてくれる筈だったろ」
アシルがそう言って私の手を取った。
……えぇ⁉︎
手ぇ繋がれたんだけど…。
なんとなく、体温が上がったのがわかる。
「したきゃすればいい。
俺にも聞く権利はあるんだったよな?」
天元はわざと私の耳元で話を続けた。
その途端、私がびくっと肩を竦めたのを見て、
天元がフッと息を洩らした。
アシルは気に食わなそうに顔をしかめ
「一緒にいてもいいとは言ったけど
そんな感じでくっついてるつもり?」
アシルは手を握ったまま一歩近づいて
もう私の目の前だ。
「俺がどうしようがいいだろう。
話はできる」
背中からはぎゅうっと強く抱きしめられ、
更に引き寄せられてしまう。
「待ってよ、何の話?
ちょっと…2人とも離れて…」
「アシルが離れたらな」
「天元が離れたらね」
ほぼ同時に言い放った2人。
もしかして…兄弟喧嘩?
あんなに仲良しだったのに、何で急に。
私を挟んで火花を散らす兄弟…
どうしよう…。
あまりの居心地の悪さに
ただただ立ち尽くしていた私の耳に
「じゃあいいよ」
大きなため息が届いた。
折れたのはアシルだった。
「睦。…睦は、
俺の所に通うようになって、すごく綺麗になった」
「………へ⁉︎」
なんだ、…なんて⁉︎
戸惑う私には構わずにアシルは更に続ける。
「ごめん、俺のせいだけど…。
長いこと昏睡状態で…大変だったよね。
でも元気になって、
俺に会いに来てくれるようになってから
日に日に可愛くなった。
頬も唇も薔薇色、元気に笑うし
ふっくら健康的ですごく可愛い…」
私の目の前で、愛しげに目を細めた男は
…本当にアシルだろうか。
まるで別人のようだ。
こんなに饒舌だったかな……
……
ん…?
ふっくら、健康的で、スゴク可愛イ……?
なんかそれって…。
『太った?』
不躾に、
そんな事を私に向かって言った男がいたな…
私はくるぅりと首を後ろに向けて
愛しいハズの男を見やった。
…きっと、ひどく責めるような目をしていただろう。