第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
こいつは自分の行動に
自信のある人間だった。
したい事も明確だったし、
それに向かっていくだけの力もあったはず。
あの強い瞳は
忘れようとしても忘れられないものだ。
ここに来たばかりの頃、
俺に嚙みついて楯突いて
ちっとも言う事をきかなかった睦。
それが、…どうした事だろう。
この変わりようは。
俺は、睦が俺のそばにいるのなら
好きな事を好きなようにすれば良いと思ってる。
ここを去りたいというなら話は別だが
したい事があれば何でもさせてやる心づもりだ。
それなのに…
俺の言う通りにする、なんて…。
どういう事だ?
何があったのか、
ゆっくりと記憶を辿ってみる。
でも思い当たる節は何もなかった。
無理矢理言う事を聞かせようとしても
動くような女じゃない。
それがこんな事を言うなんて…
「睦」
はっきりと呼びかけると
必死で嗚咽を殺し
鳩尾のあたりを痙攣させながら
俺の声に耳を澄ませた。
「それを俺が決めなけりゃ
お前はやってけねぇのか」
1番の疑問をぶつけてみる。
睦は息を凝らして動きを止めた。
少し、何かを考えているようだった。
「お前は自立心のある女だったよなぁ?
今まで通り、好きなようにすりゃいいよ。
それで起きた想定外の事や厄介ごとは
俺が何とかしてやるから」
できる限り柔らかく言ったつもりだ。
しかも偽りのない、俺の本心。
「…こわい…」
「…は…?」
「怖くなったの…自分の好き勝手するのが。
天元の言いつけに逆らった事で、
おかしな方向に進んでいくの…」
そういって俺に縋り付く。
「俺の、言いつけ?」
俺が何を言いつけた?
しかもそれに逆らったせいで?
どうなったって…?
つうか、逆らうって…。
「そんなん、俺が修正してやるから。
そこまで何に怯えてんだよ。
俺にもどうにかしてやれねぇのか?」
睦はハッとして俺の目を見た。
そして俺は、
「…ここ、秘密の通路でもあるの?」
その言葉を耳にした瞬間、
こいつの憂いのすべてを理解したのだった。