第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
「…え…?」
パティオで…?
あの、木の影で…?
あの時アシルは、見ていないって言ったの。
来たばかりだと。
それなのに…
「可愛い声だった…。睦の…
聴いたことのない、甘い声…」
そう言いながら、見上げている私の顎を
手全体で掴み、固定する。
近づいて、
鼻先が触れそうなくらいまで。
「俺がキスしても、あんな声出すか?」
「‼︎」
知ってる…
私たちが何してたか。
見てた。
聴かれてた…!
なんだかすごく…
「誰が出すか‼︎」
腹が立つ!
私の叫びに、アシルは目を見張った。
頬を染めて俯くとでも思ったか。
ザマァみろ!
「見てないって言ったのに!嘘つき!」
顎を掴む手から逃れ喚く私を見て、
アシルは嬉しそうに目を細めた。
その顔を見て、
アシルは気の強い女が好みだった事を思い出す。
…しまった。
ザマァみろじゃなかった…。
まさか喜ばす結果になるとは…。
「ごめん。俺も動揺してたんだ。
睦があんなに可愛くなる所を
目の当たりにして、冷静でいられなかった」
「うる、さいな…!」
ぐっと肘を立て、アシルの胸を押し遣った。
緩んだ腕から抜け出そうとした瞬間、
「睦、また来て。待ってるから」
素早くほっぺたにキスをされた。
「何するの‼︎」
手の甲でそこを拭い
ぱっと顔を上げるも、
そこにはもう、誰も居なかった。
急に、辺りはシンと静まり返る。
…どうしよう。
アシルが私を好き…?
鯉…じゃない、恋してるだって。
しかもわざわざ、
私に会いに来たって言った。
こんな所まで。
おかしな話だ。
いつ、どのタイミングでそんな事になったのか。
私がそんな思わせぶりな事をした?
毎日会いに行ったから?
だってそれは、怖かったから…
でもそんな事を知らないアシルには、
好意的に映ったのだろうか。
私が、やり方を間違えたのかな…
きっと、そうなんだよね。
どうしよう…
私が…天元の言いつけを守らなかったから。
アシルの事は俺がやる
天元は、そう言っていたのに…。
あぁ、あんなふうに告白されて、
少なからず喜んでしまっている自分は、
…どうしたらいいだろう……。