第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
すると予想以上に近くにあったアシルの、
綺麗な目が…そこにあって。
昼間に気がついた、
この兄弟の似ている所。
声と、目だ。
その目が、また私を惑わせる。
違う!
私は勘違いを振り払うように
大きく頭を振った。
怖いなんて言って震えている場合じゃない。
しっかりしなくちゃ。
1番怖いのは、自分の気持ちが揺らぐ事だ。
「このままはだめ。
あなた誰に触れてると思ってるの?」
「うん…。きっと天元に殴られる」
「それだけじゃ済まないわ」
「うん、それもわかってる」
「わかってるなら離れて」
「わかってるのに離したくないんだ」
「だから何で…!」
「睦の事が好きだから」
すき…。
「あ、ぁ…びっくりした…。
うん…ありがと。私も、好きだけど…」
でもこれはちょっと…。
まぁ確かに好きを伝えるには
手っ取り早いといえば手っ取り早い…
「…違う。この『好き』は恋だ」
こい…。
「へ、ぇ…そうなんだ…。え…?」
餌を求める鯉みたいに、口をパクパクさせる私…
ん?鯉?
…いやいや、恋?
「…アシル?」
「ついさっき気づいたんだ。
俺は睦に恋してる。
昼間に会いに来てくれた。今日だけじゃなく
ずっと、俺が王宮を出てから、
ほとんど毎日のように」
…耳元で喋らないで欲しい。
その声はだめだと思う。
でも振り向いたら、あの目が私を見てるから。
「俺のこと、怖かっただろ?なのに、
一生懸命わかろうとしてくれた。
笑って話を聞いてくれた」
「そんな事…」
自分の恐怖の抑制のためだ。
そんなふうに、
うっとりと言われるような事じゃない。
「そんな事が嬉しかったんだ。
3日間、来てくれなかったよな。
もう睦の事しか考えられなかったよ。
顔が見たくて、
声が聞きたくてしょうがなかった」
無口なアシルが、
今日はやけに能弁だ。
「さっきの……」
不自然に途切れた言葉を不思議に思い、
私はつい、後ろのアシルを見上げてしまう。
それに気づいて私と目を合わせたアシルの、
…なんて色っぽいこと。
どきっと胸が高鳴った。
天元に、似てるからじゃない。
『アシル』に、心を動かされたのだ。
「さっき、あのパティオで、
天元と何してたの?」