第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
まさか、こんな所にお前がいるとはね。
いつからそこにいて、
どこから見ていた?
さすがは俺の弟だ。
気配を消すのはお手の物か。
睦に溺れていた分、俺の負けだ。
身体中の血が沸いている。
怒りにも似た…それでいてどこか冷静な…
不思議な気持ちだ。
睦は不安そうに
小さく震えながら俺を見上げた。
安心させるためににこりと笑ってみせる。
…どんな時でも睦に対してなら
うまく立ち回れる自信がある。
こいつを心穏やかに過ごさせる為なら
俺はきっと何だってやるだろう。
ただ睦を奪おうとする者が現れれば
俺は冷静さを欠いてしまうのかもしれない。
どんな手を使ってでも
それを阻止しようとするはずだから。
たとえ睦を
泣かせる事になっても。
…矛盾してる。
「…ノゾキとは悪趣味だな、アシル?」
そう声をかけると、
腕の中の睦がびくりと竦み上がった。
パティオの入り口。
大きな木の影から姿を現したのは
思った通り、アシルだった。
俺と目が合った途端、
にこっと微笑んでみせる…。
「ノゾキだなんて。
たまたま通りかかったら2人の姿が見えたから
探していただけだ」
つまり、
今来たところだと…。
まぁ今回は周りに気を配れなかった俺の失態だ。
疑わしいが素直に飲んでやろう。
「そうか…それは悪かった」
「いや、いい。でも、…
覗かれて困るような事をしていたのか?」
…白々しく聞こえるのは、
俺が疑っているからか?
「どうだろうなぁ?」
答えを濁した俺は
震えている睦を見下ろして
「ごめん、俺のせいだな」
それをおさめるべく、
小さな頭を抱え込み背中を何度も撫でた。
あんな事をしている所を
見られてしまったかもしれない。
そんな不安が、震えとなってあらわれたのだ。
「ん…大丈夫」
大丈夫、なようには
およそ見えないが。
俺が謝ったから、許そうという姿勢なのだろう。
……
「睦可愛い」
アシルには聞こえないよう、
耳元で囁くと
ぴくりと反応し身を引いた。
「…もう!大丈夫だから、はなして…」
「ん…そうか」
ちょっとふざけて見せると
少しの怒りのせいなのか、震えは止まった。
それを見届けてから
俺は睦を解放する。