第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
私が急いでいたのなんか、
楽しみとは程遠い理由だ。
私は素直に首を横に振る。
「じゃあ何で?」
ちゅ、とおでこにキスをして
天元は私をぎゅっと抱きしめた。
あぁ、…
この長い腕が、
私に大丈夫だよって言っている。
大丈夫…
「心配で…」
「アシルが?」
「違う…。私、が…」
よしよしとほっぺたを撫でてくれる大きな手。
ひどくあったかい。
こんなに暑い日差しの中、
暖かさを感じるなんておかしいのかもしれない…
「睦が?…待てよ。
睦が自分を心配してる?」
支離滅裂な私の言葉を
理解し切れない天元は何度も首をひねった。
「私が心配をしてるの。アシルが、
またおかしな気を…」
そこまで言って、その先を言葉にするのが
ひどく怖くなって、…
続きを継げなくなってしまう。
ひと粒、溢れてしまった涙を見て、
「…そうか…。悪ィ…そこまでは
気づいてやれなかった。そうだな…ごめん」
ごめん?
「なんで…?」
「だから、気づいてやれなくて」
いいながらほっぺにも優しいキスをくれる。
「言ってないんだから…
当たり前、でしょ…」
「お前に言われなくても
気づいてやれて当たり前なんだよ」
「そんなの…」
そんなわけないじゃない。
「あーあ…泣かせの台詞じゃねぇんだが…?」
本格的に泣き出した私を見て天元は苦笑い。
その顔が、
ものすごく愛に溢れているように見えて
私はたまらず、その広い背中に腕を回していた。
力を入れてしがみつくと
天元もぎゅうっと抱きしめ返してくれて
私は胸が高鳴るのを感じる。
「怖かったんだろ?
それが毎日会いに行った理由なんだな?」
彼の腕の中で
うんうんと何度も頷くと
「それならそうと言えよ。バカだな」
天元は言葉とは裏腹に
愛しむような声を出した。
「だって…だって、天元の…大切な弟、だから…
そんな事を言ったら…天元が、傷つく…って…」
「お前はほんとばかやろうだな。
俺はそんなヤワじゃねぇし、優しくもねぇんだよ。
悪いがアイツより睦の方がよっぽど大事なの」
嬉しそうに笑って、
ちゅっと、キスをされた。
「…!」
突然の事に、涙も止まる。
「もう泣くなよ。俺が泣かせたみたいだろ…」
そう呟いた唇が、そっと重なった。