第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
毎日日課にしていた事を
急にやらなくなるのって
すごく不安になったり
淋しかったりする。
この場合、
毎日アシルに会いに行っていたのを
お休みしていた事なのだけれど。
せっかく上げたはずの親密度が、
この会わなかった3日のせいで
下がってしまっていたら
どうしようという不安だ。
かと言って、アーディルさんを
無理矢理付き合わせていたのは事実。
彼は顔には出さないし
二つ返事で承知してくれたけれど、
私のこんな面倒なお願い、
迷惑でしかないことくらいわかっていた。
それでも彼に甘えてしまう程、
私はアシルとの関係をどうにかしたかった。
それはアシルのためと銘打っておきながら
その実、私のためだったりするのだ。
あの時のアシルの影に、
私はまだ苛まれている。
怖くて仕方がない。
だから、この人はいい人だと思い込みたい。
仲良くなってしまいたい。
それは焦りとなって
私の心を追い立てた。
「睦、そんなに引っ張るな。
まだ時間はたっぷりあるだろ?」
3日も待った。
また、以前のアシルに
逆戻りしていたらどうしよう。
そんな不安が、知らないうちに
私の足を前へ前へと運ばせた。
だって今日は天元もいる。
何かあってもこの人なら止めてくれるはず。
天元の手をぐいぐい引く私に対して、
彼と言えば後傾姿勢でそれを阻止してくる。
私はハッとして、
少し落ち着こうと深呼吸。
「お前、どうした。…ちょっとおいで」
天元はキョロキョロと辺りを見回して
市場の外れにある、パティオへと
私を誘い込んだ。
レンガで出来た小径。
それに沿うように植えられた背の低い花木。
更にそれを囲う背の高い木。
その木の影に連れ込まれた私。
背中に当たる幹の感触が
なんだかくすぐったい。
「そんなに、楽しみか?」
私の肩に手を乗せて身をかがめる天元は、
とても優しい調子で問う。
「たの、しみ…?」
楽しみ?
何が?
「あれ?違うのか?アシルに会うのを
楽しみにしてるから、
そんなに急くのかと思ってた」
…そんなふうに見えてたの?
そのくせ、いつものように
嫉妬に駆られて機嫌を悪くしない天元は
どこまでも優しい瞳を私に向けた。