第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
別にアシルが喜んでくれるわけでもない。
それでも私がそうしたくて来ている。
ひとりであそこを出る事は出来ないから、
迷惑だとわかっていながら
アーディルさんについて来てもらっていた。
「いえいえ、
睦様と毎日デートができるなんて
この上なく幸せなんですけどもね…」
デート……?
「でもさすがにそろそろ…バレそうです」
「バレる⁉︎誰に?」
「王様と…ヘタすれば天元様に」
「それは…私叱られます!」
「そうでしょうとも。
しかしそうなるのは私も不本意です。
可愛い睦様がお叱りを受けるだなんて…」
アーディルさんは大仰なため息をつく。
「私の姿がちょこちょこ消える事に
王様が疑問を持ち始めました。
王様が気がつけば、
天元様のお耳にも入ります。
そうなれば芋づる式に
すべてが明らかになるのは時間の問題かと…」
「…睦」
アーディルさんの話を聞いて
アシルが声を上げる。
私もアーディルさんもぱっとそちらに目を向けた。
「天元に言わずに、ここに来ていたのか?」
「アシル様、知らなかったんですか?」
「てっきり許可されているものだと」
「アシル様…天元様の
睦様に対する独占欲をご存知ないんですか?
いくら相手が弟ぎみとは言え、
毎日会いに行く事を
簡単にお許しになるはずがありません」
「睦はどうして許可を取らない」
アシルは納得がいかない様子。
ただ許可を取ればいいだけの話、と
思っているに違いない。
「私も天元に話したんだよ?
毎日、とまでは言ってないけど、
アシルのお店に行って来てもいいかって」
「そうか。…で?」
……
私はその時の事を思い出していた。
その日、私の元を訪れた天元に、
「時間がある時にアシルのお店に行っていい?」
そう訊いてみた。
私だってバカじゃない。
アシルに会いに、とは言わない。
パンケーキ食べたいな、のニュアンスだ。
「なんで?」
それが天元の答え。
だから、
「パンケーキ食べたいから」
と。答えた。
すると、
「取り寄せてやる」
しれっと言った。
更に、
「散歩がてら。気晴らしにもなるの」
と食い下がると、
「俺以外の男に、そんなに会いに行きてぇか」
と睨まれた。