第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
「ちょっとお前、睦に対して
馴れ馴れしすぎると思わねぇか?
だいたい『俺のモノ』なんて
ただの言葉の綾だろうが。
そもそも俺のこと王子だと思ってる?」
「当然ですとも。
ですからこうして呼び戻しに参ったのです。
大臣たち待ってますよー?
時間に厳しい天元様がどうされたんですか」
……はっ。
それは、
「ごめんなさい!私が用事のある事を知らなくて
誘ってしまったんです…」
私のせいかも…。
「あら。それは違いますよ、睦様。
誘ったのは何も知らない睦様、
受けたのは全て知っていた天元様です。
無理ならお断りをすればいいのです。
天元様はそれをしなかった。すなわち、
悪いのは天元様です」
「俺が睦の誘いを断るわけねぇし。
しかもちゃんと言っといたぞ、
俺遅れるし、なんなら来られねぇからって」
「仕事を何だと思ってらっしゃいますか!」
「ん?だって今日は俺なしでも
全然平気だしなぁ?」
天元は天を仰いで首をひねる。
「早く行って下さい‼︎」
「はいはい…、」
天元は私の事を振り返り、
「ごめんな睦」
私をハグした。
それから
「アシル、美味かった。
また来るからな」
にこっと微笑んで、
アーディルさんに目で挨拶をしてから
王宮の方へと颯爽と歩いて行った。
あーあ…行っちゃった。
淋しくてその背中をぼんやり見送っていると
「睦様、ごめんなさいね?
あぁでも言わないと…
天元様だけ帰すなんて出来ませんから」
……
「えぇ?どういう事ですか?」
そう訊いた私に
曖昧な笑みを返したアーディルさんは
くるりとアシルに向き直る。
「アシル様、今日もお元気で何よりです」
遅ればせながらの挨拶を済ませてから
再び私に目を向けた。
「睦様、明日もこちらへ
足をお運びになるおつもりですか?」
「あ、はい。そのつもりでした。
でも…さすがにもうご迷惑ですよね…?」
そう、私はほぼ毎日、
ここへ通うようになっていた。
それはもちろん、天元には内緒でだ。
今日みたいに予定が合えば一緒に来る約束をする。
でも天元は公務で忙しい。
毎日、アシルに顔を見せてあげられるわけではない
忙しい兄に代わって、
私が独断で会いに来ていた。