第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
「2つ作るとそれなりに時間がかかるから…」
アシルがそう言ったのを聞いて
「あ、ごめんアシル。ひとつでいいの!」
私は慌てて謝った。
「え…?」
「ごめんね、1人で食べきれそうもないから…
天元と半分こさせて?」
「ああ、…それはいいけど…珍しい」
アシルは目を見張り言葉を詰まらせた。
確かに珍しいけど…
何となく失礼な感じがするのは私だけかな…
「はは……ちょっとあんまり、お腹空かなくて」
気を取り直し返事をすると、
「そりゃそうだろうなぁ?あんだけ食やぁな」
今度は天元が余計な事を言う。
それじゃあ私が、
無計画に食べるおばかさんみたいじゃないの。
「どうしてそんな言い方するのよ?」
「んー?何だ?事実だろ。
怒るようなことか?」
「怒ってなんかないけど…
もうちょっと言い方ってものがあるでしょ」
「わかったわかった。悪かったよ。
俺と半分こした方が、より美味いもんな?」
宥めるように天元は、私の頭に手を乗せた。
……優しげにそんな事を言われ、
そうされると…何も言えなくなってしまう。
だってそれこそ事実なのだ。
天元と半分こするのは、
時間も味覚も共有できてとっても幸せ。
…結局私は、この人と一緒なら何でもよくて
やっぱりおばかさんなのかもしれなかった。
「…なにを呆けてんだよ。可愛いヤツだな」
私の頭を抱き寄せる天元に、
「ちょっと!こんな所でやめて!」
割と本気で言い放つ。
私たちのその様子をしばらく眺めていたアシルは
「…わかったよ。ちょっと待ってて」
相変わらずのおとなしさで
キッチンへと戻って行った。
「おいしーい!おいしいよアシル!
いつどれだけ食べてもおいしい!」
あの後、その場で待っていた私たちに、
ご主人が気がついて
他のお客さんもいるから店内は煩わしいだろうと
簡易的なテーブルセットを設置してくれた。
そこに座り待つこと約10分。
ふんわり厚焼きのパンケーキの上に
生クリームと山盛りのフルーツの乗った
何とも幸せな食べ物が届けられた。
できあがったパンケーキを前に
我慢のきかなくなった私は
半分こを忘れる勢いでそれを頬張っていた。
それを咎めるでもなく、
目の前の愛しい人は頬杖をつき
幸せそうに私を眺めている。