第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
彼に手を引かれ、
そこかしこのお店の人たちと交流を深めていると
手荷物がどんどん増えていく。
みんなが天元に商品をお裾分けするのと、
それだけでは申し訳ないと
天元が一品購入するからだ。
持ちきれなくなって、
見兼ねた私が手伝いながら
「いくらなんでも買いすぎじゃない?」
と口を挟むと
「いやいや、コレで町が潤うならいいじゃねぇか」
ひどく晴れやかに笑うので
私はもう何も言えなくなるのだった。
そうしているうちに
たどり着いたひとつのお店。
彼の弟がお世話になっている、
パンケーキのお店だ。
数メートル先から、
甘くていい香りが私の鼻腔をくすぐっていた。
さっきあれだけ食べたというのに、
別腹とでもいうのだろうか、
下手をすればお腹がグウと音を立てそうだ。
それを天元に悟られないように
おとなしく彼の後をついていく。
店の裏手に回ると
開きっぱなしの勝手口から、
忙しそうにするアシルが見えた。
今日もがんばってるなぁ…
そんな目で弟を見遣る天元の声が聞こえて来そう。
少し前に、異国からやって来たというこの夫婦。
よく町に出入りしていた天元とすぐに打ち解けて
今では1番の仲良しだという。
そんな2人にだからこそ
大切な弟を預けられたし、
向こうも受け入れてくれたのだと
嬉しそうに話してくれたっけ。
注文も落ち着いたのか、
ふぅと大きく息をつき汗を拭いたアシルが
何かを感じたのかクルリとこちらを向いた。
あ、と口が大きく開き、にこりと笑うその顔は
あの頃とはまるで別人だ。
人間、暮らす環境が変われば
ここまで別人になるものなんだな…
と、思わずにはいられない。
店番の夫婦に声をかけてから
私たちの前まで駆けてきたアシルは
「来てたのなら声を掛けてくれればいいのに」
口調も柔らかく、天元に話しかけた。
「忙しそうだったからな。
よくがんばってるな、また腕上げたって
主人が褒めてたぞ」
褒められた弟を誇らしげな目で見下ろした。
そんなふうに言われる事が予想外だったのか
アシルは心なしか照れたように顎を引き
「…まだまだだ」
なんと謙遜してみせた。
何だかとっても微笑ましい図だ。
私は無意識のうちににこりと笑っていた。