第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
「はい…。ありがとうございます」
感慨深げに瞳を潤ませるジャナ。
まったくもう…。
「そんなことより、もうパンないの?
もっと食べたい」
「本当ですか⁉︎ありますあります!」
ジャナのいい所は
すぐに忘れる所だと思う。
次の話題をふれば
そっちに気が行ってひとつ前の事は忘れる。
でも失敗はちゃんと蓄積されて
次に生かされるのだ。
素晴らしい人材。加えて、
泣いたり笑ったり、素直なジャナはとっても可愛い。
故に私はジャナが大好きだ。
いい子が私のそばにいてくれて良かった…。
「あの…睦様?お昼の休憩って…」
「ん?…んー、昼食を食べてすぐかしらね」
「お前今そんなに食って、
パンケーキも食うつもりなのか?」
「だってジャナのパンがおいしくて…
おいしくて……」
あれ?
振り向くと、私を呆れたように見下ろす天元が。
ジャナは慌てて頭を下げている。
「…もう、…そんな時間?」
食べるのに夢中になってしまって
まったく気づいていなかったけれど。
…少しだけのつもりの昼食も
気づけば半分以上たいらげて…
「ちょっと早ぇけどな…
お前それにしてもよ、相変わらず食うなぁ…」
呆れを通り越して感心…?
「えぇっと…。着替えて来ようかな?」
ゆっくりと立ち上がる私を
にやにやと見遣り、
「新作パンケーキ、食えるかなぁ?
太るの覚悟の上だな睦」
嫌味にも似た台詞を吐く。
どうせ私は大喰らいですよ。
そして食べた分だけ太り、
いつも悩みの種となるのだ。
それをわかっていて、この男は…。
ギッと睨んだ私に
「可愛い可愛い」
カラカラと笑って見せ、
早く着替えて来いと指をヒラヒラと振った。
くっそぅ…。
絶対に太ったまんまでいるもんか!
食べた分だけ動いて
きれいに痩せてやるからな!
「王子様こんにちは!」
「これ持って行って!」
「相変わらず仲良しね」
……いつもの事ながら、
この国の王子と民たちはとても仲がいい。
活気付いている城内町。
商店の立ち並ぶこの通りを
一歩進む毎に元気な声が飛び
みんなが天元に笑顔を向けた。
彼もそれににこやかに受け入れて
気さくに会話をしたりしている。
昨夜の雨の影響もなく
すっかり普段通りの町並みは
私にとってもひどく居心地がいい。