第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
愛しいこの人がそばにいてくれれば
何も怖くないということかな…。
私も大概、単純だ。
「…ありがと」
諸々を込めてお礼を言う。
いきなり感謝された天元は
わけがわからないと顔に書いて
「…おぉ」
それでも受け入れてくれた。
私はそれが可笑しくて愛しくて、
彼の広い胸にぎゅっと抱きついてみる。
すると、何の躊躇いもなく
私の背中を抱きしめてくれて
その幸せを噛み締めた。
「何が、あったかよくわかんねぇけど、…
もう大丈夫そうだな」
ぽんぽんと頭を撫でてくれる天元は、
本当によくわかっていなかったようで、
…それではいけないような気がした私は
「来てくれて助かったし、嬉しかったの」
はっきりと伝える事にした。
彼の胸の中から、そっと見上げてそう言うと
みるみる優しい笑顔を作り、
「あぁ、俺のおかげってコト」
満足そうに頷いてみせる。
「うん。来てくれてありがとう」
「どういたしまして。…なぁ、
感謝は言葉でもいいが、コッチにも、
表してくれないか」
そう言って自分の唇を
人差し指でとんとんと叩く。
…キスをしろという事かしら。
「それが、感謝を伝える事になるの…?」
「なるねぇ。
なんならありがとうの言葉よりも効果的だ」
「それは…知らなかった」
そうして私は
彼の肩を借りて少しだけ伸び上がり、
その熱い口唇に自分のそれを触れさせた。
きっかり5秒。
なんて長い5秒…
自分からこんな事をすると
ひどく悪い女に思えて、…
離れた口唇に目を開くと
間近で合ってしまった視線から逃れるように
顔を俯かせた。
「…睦からのキス、新鮮だな」
なんて、おかしな所で感動している彼は
幸せそうに私のおでこにキスをくれる。
多少弱まった雨足。
いつのまにか遠ざかる雷。
もしかして天元は、
私の嫌なものを
遠ざけてくれる魔法でも持っているのかな…
「さ、どうせ寝てないんだろ?もう休むぞ」
私ごと立ち上がり
当然のように一緒にベッドへとなだれ込む。
ぎゅっと包まれると
さっきまで震えていたのがウソのように
私は安心しきっていた。
安心してしまうと
次にやってくるのは急激な睡魔だ。
私は彼の温もりを布団代わりに
幸せな夢の中へと落ちていった。