第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
「睦、雷が怖ぇのか?」
安心させるように
私の首元に顎を乗せて
優しく囁く、愛しの王子様。
「…震えてる。悪かった、
知ってたらもっと早くに駆けつけたのに…」
悔しそうな声を上げる彼に、
もうそれだけで満たされていき
思い切り強張っていた身体が
確実に解されていく。
ふっと、全身から力が抜けたのが
伝わったのだろう。
愛しの王子様、こと宇髄天元は
私の腕を掴み顔を上げさせた…途端、
ビカビカと何度も閃く稲光。
私は思わずぎゅっと強く目を瞑り
両耳を塞いだ。
と同時に轟く、もの凄い雷鳴。
「っぅうー…」
つい呻いてしまった私を再び抱き込んで
「大丈夫だよ。俺が来たから。そばにいるからな」
その台詞を体現するかのように
私に身を擦り寄せてくれる。
「それにしても、…涙まで流してんのに
よくひとりで耐えたな。
誰か人を呼べばよかったろ?」
胸にうずもれる私のこめかみに
そっと唇を寄せて、天元は続けた。
「明かりもつけりゃ少しはマシだろうに」
「…だって…」
私はずずっと鼻を啜った。
あぁ…怖くない…。
「真夜中なのに…。
みんな…休んでる、でしょう?」
恥ずかしいくらい辿々しい話し方。
まだ涙から解放されない私は
息すらうまく継げられずにいた。
それでも、
この人の存在のおかげで
随分と楽になった。
「バカだな。あいつらはお前のためにいるんだ。
呼べば喜んで駆けつける。ジャナあたりは特にな」
くくっと笑いを含み
いつも通り、何気ない話をしてくれて
私は少しずつ平常心を取り戻していく。
さっきまで、耳元で鳴っていた
強い雨音も唸る雷鳴も
まるでどこかへいってしまったかのように
遠くに感じて…
私はつい、外へと目を向けた。
すると、なんとも間の悪い事に…
示し合わせたかのように
青白い光が部屋中を照らし出し…
照らし出したというのに
まったく怖くないのは、
もう天元がいてくれるからに他ならない。
光に遅れること数秒。
大きな音がこの部屋を壊す勢いで鳴り響いたが
さっきの恐怖はやっぱり感じない。
私は、ふと天元を見上げた。
その視線を受け止めて
「んあ?どうした」
天元はさも不思議そうな声を出す。
暗順応しきっている私の目は
この暗さの中でも
目の前の人の顔くらいとらえる事ができる。
