第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
雨の音。
雨、と言っても大雨だ。
強い風が雨雲を呼び、
仕舞いには雷雲まで呼び寄せた。
部屋の隅で、シーツを頭から被り
目を閉じてひとり震えていた私は、
それでも瞼の裏に稲光が閃くのを見て
その後間もなくやってくるであろう雷鳴を覚悟して
身を硬くする。
カラカラと嫌な音を立てて
空の高い所で雷雲に絡まっていた雷が
もの凄い勢いで
ガシャーン‼︎と地面にぶつかった音を
床からも伝わってくる振動と共に聴いた。
ドオォと周り中の空気を巻き込んで轟く雷は
今ちょうど、この後宮の真上辺りにいる。
びくりと身体を震わせて、
既の所で泣きはしないものの
私は早く早く、あの雷雲が去るのを待っていた。
誰もいない室内。
真夜中であった為にルームライトすら点いていない。
真っ暗な部屋の中、
雨足はどんどん強まり
それに伴って、私はどんどん身体を縮ませていく。
自分で自分をぎゅっと抱き締めたところで
安息などやって来なくて…。
シトシト降る雨は大好きだ。
でもこの嵐のようなのは大嫌い。
だって決まって雷を連れてくる。
あぁ、どうしてこんなに怖いんだろう…
早く行ってしまえばいい。
怖いよ、助けて…
「みーっけ」
続く雨音。
閃く雷光。
それらの恐怖を
見事に遮断してくれるあたたかな腕が
私の事を優しく包み込んでくれた。
「そんなもんかぶって…
ひとりでかくれんぼでもしてん、の…」
揶揄うようなその台詞は、
シーツの端をめくった途端に
不自然に途絶えた。
稲光のおかげで、
私のほっぺを濡らすものが見えたのだろう…。
「…悪い。マジなヤツか」
床に直接座り込み、
壁に半身を預けていた私は
力強い2本の腕に軽々と抱き上げられていた。
その膝に乗せられて
腕全体がその肩に乗るまで深く身体を合わせると
程よい力で抱きしめてくれる。
私はその腕を
しがみつけと言わんばかりにそこに在る
首元に力いっぱい巻きつけた。
「おいおい、それじゃ俺
首締っちまうから…」
私のあまりの必死さに少し笑ったその人は
それでも腕を解かせるでもなく
好きなようにさせてくれる。
頭から背中にかけてを何度も撫でてくれる手は
間違いなく私の緊張を溶かしていった。