第23章 こいびとおにいちゃんズ。の彼女
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さっきまで
あぁでもないこうでもないと響いていた声も消え、
静かになった部屋の中。
ほぼ空の湯呑みと、
お茶菓子としていただいた
彼女たちからの手土産。
それらを片付けようと手を伸ばした時。
スッと静かにに開いた襖の間から
愛しい人が顔を覗かせた。
「…もう帰ったのか?」
「うん、さっき。ありがとうございました」
座ったまま、ぺこりと頭を下げると
「いえいえ」
にこりと笑った天元は
その隙間からするりと大きな身体を通し
襖をぴったり閉めてから
私の隣に収まった。
「女3人で何の話をしてたんだ?」
「えぇ?聴こえてたんじゃないの?」
彼の耳の良さを知っている私は
それを訝しんで、下からその目を覗き込む。
「まさか。俺だってそんな野暮じゃねぇよ」
掌をこちらに向けて潔白を示す。
どうだかなぁ…?
聴く気はなくても聞こえてきた、なんて…。
まぁ、ここは本人の主張を尊重しましょう。
「其々にお悩みは尽きないのです」
「ヘェ…」
あまり納得の行かないような空返事。
まぁ、内容を知らないのだから当然だ。
「アレ、不死川と煉獄んとこの女だろ?
あいつらなんかしたの」
興味本位の揶揄いでは無い、まるで
『まさかあいつらが?』の調子で訊いてくる天元。
「…意外?」
「…んー…?…いやー?…」
顎に手を充て、天井に目をやる天元は、
明らかに図星だ。
なんだかんだ言って、
あの2人を敬重している事を知らない私ではない。
つい笑いを洩らした私を軽く睨み、
「何だよ」
不満そうに私のおでこを指でつつく。
「なんでもありませーん」
自分はあの2人に敵わない、と
きっとどこかで思っているこの人。
直接言われた事はないし、
きっと私にそんなこと言ったりしないだろうけど
そんな気持ちがびっしばしと伝わってくるのだ。
でも私はそんな事ないと思っているよ。
…惚れた、欲目…?
「随分と楽しそうだな」
どうしても洩れてしまう笑いに
今度はほっぺをつつかれる。
「痛いいたい…ふふ」
「…そんなに楽しかったのか?」
眉間のシワは一転、
優しい笑顔になった。
つつかれた所を大きな掌で包まれる。