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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第23章 こいびとおにいちゃんズ。の彼女





目に飛び込んできた杏寿郎さんの表情は、
淋しげな声音とは裏腹に、
ひどくにこやかで落ち着いたものだったから。

声に騙されたのだ。
私の顔を上げさせる為の装いだった。

「ああ、思った通り、
こんなに頬を真っ赤にして。
俺の睦は何と可愛いことか」

「ズルいです!声で騙すなんて!」

「む。騙してなどいない。
睦が勘違いをしたのだ」

なんて事!
杏寿郎さんがこんな事を言うなんて!

「こんなの杏寿郎さんじゃありません!」

「いや、俺だ。もし違うと言うのなら、
君が俺を変えたのだ」

杏寿郎さんは愛しそうな目で私を見下ろした。
お互いの体を密着させるように
背中を強く引き寄せられ、
力を込めて見つめられると
私の心は惹きつけられてしまって
逸らすことができなくなった。

「私は、何もしていません…」

ぐっと顔を寄せられて、間近に迫った唇を
意識してしまって、
また頬が熱くなってくる。

「何も…?そんな事はない。
俺の心をこんなに惹きつけるくせに…」

杏寿郎さんが、甘い…

「俺の唇が、
睦に触れたいと言っているのだが…?」

「…ぁ…、」

顎に添えられた指が
くいっとそこを上に向けて
剥き出しになった首筋にそっと触れた。

「っひぁ!」

そんな事をされるとは思っていなかった私は
必要以上に全身を引き攣らせてしまう。

「きょ、杏寿郎、さんっ」

そんな場所に唇で触れられて
私は思い切り戸惑った。

くすぐったいような…なのに痺れるような感覚。

触れるか触れないかくらいの距離で

「…睦…、困った…」

風のような囁きが吹き付けられた。

「え…?こまっ、た…?」

何が?
そう訊こうとしたちょうどその時。

今度は唇で優しく挟まれる。

「ひ、やぁ…杏寿郎さん、っ!」

「困った事になった。睦に、
無性に触れたい…」

「……ふ…れ、たい…?」

言葉の意味を探る。

触れるって、…もしかして…そういう事…?

答えに辿り着いて、私は硬直した。
私たちは、そういう関係になった事がない。
つまり私は、生娘だ。



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