第23章 こいびとおにいちゃんズ。の彼女
そういう事をするのなら
もうこの人しかいないと思っていた。
いつかきっとそうなる事もわかっていた。
でも、それが今日、…今なのかと思うと
正直怖い。
嫌なわけじゃなくて…ただ漠然と、怖い。
そして、流石は杏寿郎さん。
毎度の事ながら、
私の気持ちに敏感に対応してくれる。
「睦…?俺は君を、愛したいが、」
言葉を切った杏寿郎さんは
私の首筋から唇を這わせて
耳の下まで移動した。
その動きにも、ぴくりと反応してしまう私…
優しい愛撫に心が緩む。
緩むくせに、
身体は逃げようと無意識に拒んでいた。
「…君は、愛されてくれるか…?」
「っ」
どう、しよう…
どうすれば…?
『愛したい』
そう言われて…
あんなに聞きたかった、杏寿郎さんの本音。
はっきりと言ってくれればいいのに。
そうしたら、その通りにするのに。
心からそう思っていた…。
その本心が聞けて、
じゃあその通りにするのかと言ったら…。
………。
ということは、
私は…躰を、許すという事だ。
でも、相手は杏寿郎さん。
…大好きな人。
「…睦、すまない。
悩ませるつもりはなかった、大丈夫だ」
答えを出せずにいた私に、
杏寿郎さんは自ら身を引いた。
抱きしめていた腕を解き、
額に口づけをくれる。
「…杏寿郎さん待って下さい」
誰かに相談せずにはいられないほど、
この人の本音を知りたかった。
私に委ねるだけでなく、甘えてほしかった。
自分のしたい事、行きたい場所、食べたい物…
それらを知りたくて、知れなくて焦れていたのに
いざ知った途端に逃げるのか。
それを、大好きな杏寿郎さんが今してくれて…
私は幸せなはず。
受け入れずには、いられない。
「杏寿郎さんに…愛、して…もらいたい、です…」
やっとの事で絞り出した返事。
もの凄く緊張した…
そんな事を自分から言う日が来るなんて
思いもしなかった。
杏寿郎さんはフッと笑って
「俺のために無理をするな。
大丈夫だ、わかっているから。
ちゃんと…然るべき日まで待つから」
よしよしと頭を撫でられる。
「それは…違います」
「睦…?」