第23章 こいびとおにいちゃんズ。の彼女
ずるい。
私を逃がさないように
背中と頭を押さえつけて、
しかも文句も言えないように口唇を塞ぐ。
両手を胸に充てて力を入れても
実弥さんにとっては無いも同じなようで。
とんっと、拳でそこを叩くと
少しだけ唇を離した実弥さんが
「やめる気になったか…?」
と、まだそんな事を訊いてくる。
違う…そうじゃなくて…
そんな思いを込めて首を横に振ったのに
自分の問いに対する返答と受け取った実弥さんが
「うんと言うまでやめてやんねェ…」
意地悪を言って再び唇を重ねた。
ただ止めてもらいたかったのに。
「…っんん!」
抗っているのか、
受け入れてしまいそうで怖いのか
自分でもよくわからないまま
実弥さんの口づけを受けるしか無い私は
「っふ、」
また涙を零してしまった。
「泣くな…」
口唇から離れた実弥さんが
私の涙の跡を追う。
生温かい舌が、涙を拭ったのに驚いて
私はビクッと身体を竦ませた。
「さっ実弥さ…!なに、するの…ッ」
そんな事する人じゃないじゃん!
よっぽど叫びたかったのを何とか堪える。
「…泣くからだろうが」
「だからって…!」
「……そんなに嬉しかったかよ」
真面目な口調なのに揶揄うような台詞を口にする。
嬉しかったかって…!
嬉しかった…けど…!
「来いよ…離れられなくしてやるから」
「……」
この感じ。
この優しい感じ…
実弥さんが、戻って来たみたい。
「顔真っ赤にして、涙流しながら
俺に見惚れてる睦に
しっかり煽られたんだが
責任取ってくれんだろうなァ?」
「!」
私は自分の頬に両手をあてて
そんな顔をしていたか確かめる。
…まぁ、見えないけれど。
「まぁ飛び出してった所で、
見つけ出して連れ戻してやるけどなァ…」
ゆっくりと重なる唇に、
もう抵抗する理由が見つからない。
「だがそんな事するよりも、
ずっと俺んとこにいろよ…」
囁きが熱に溶けて、
2人の影がぴったりと重なると
後はもう、
甘い刺激に身を委ねるだけだった。