第23章 こいびとおにいちゃんズ。の彼女
「全部気持ちの裏返しだ
言えねえ俺も情けねえが
ンなみっともねぇ気持ち、
お前に知られたくなかったんだよ」
吐き捨てるように投げつけられる言葉たち。
「…みっともないの?」
「大の男が、みっともねぇだろ?
やれ何処へ行っただ、やれ何をしてきただと
細けぇ事を気にすんのはよォ。
お前の気持ちは何処にあるのかなんて
わかりきった事が気になったり、
今喋ったあの男とはどういう関係かとか」
「………」
涙も止まるほどの衝撃だ。
この人がそんな事を思うのだろうか…。
「…知ってると思うけどよォ…」
ものすごく言いたく無さそうに
頭を掻きながらそっぽを向いた。
「俺は気持ち表現すんのが上手くねェ。
本心隠そうと躍起になる。
それがお前を悲しくさせんなら
そうならねえようにこれからはする…つうか、
わかってたんだがな、お前がツラそうなの」
おとなしくなった私の髪をそっと撫でた。
「お前ならわかってくれるだろって、…
確かにお前のいう通りだ。甘えてたんだなァ」
『おかしいなぁ…甘えてるんですかね』
さっき聞いた台詞が頭に浮かんだ。
私に甘えてるなんて
そんな可愛いものかなと思ったけれど、
彼女の言ったことは正解だったみたいだ。
「…そうですか。…じゃ」
私はその場にしゃがみ込むと
風呂敷の端をきゅっと結びそれを抱えた。
「……」
何か言いたそうに
私の事を黙って見つめている実弥さんに
ぺこりと頭を下げる…。
「…お世話になりました」
「おぉい!なんの冗談だァ!」
大声出したし…。
「冗談なんか言ってません。
出て行くって、私ちゃんと言いましたよね」
「今和解しただろうが」
「それはそれですよ。
べつに別れるわけじゃありませんけど
私は別のところで暮らします」
「なんつーこと言うんだお前はァ」
実弥さんは大きなため息をついたけれど、
私の気は変わらない。
「だってずっと一緒にいるから悪いんですよ。
当たり前になってるから、
実弥さんは私をサボるんです」
「睦をサボる…?」
「そう。ちょっと前までは
当たり前のようにしてくれていた事が
今はしてくれなくなってる」
「それは例えば何だ?」
「……優しい言葉をかけてくれたり、
もっと私の事を見てくれたり…」
言いながら下を向いてしまう。