第23章 こいびとおにいちゃんズ。の彼女
苛立った実弥さんが
また怒鳴る準備をしているのがわかった。
だから私は、
「大声出したってだめですよ!」
先手を打ってやる。
「なんだとォ?」
「凄んだって効きません!
私の事、なめてますか?
怒鳴られて言うことを聞く女じゃありません!」
「んなこと思ってねェ!」
「じゃあ何なんですか?」
「いいから入れやァ」
再び背中を押されるが
「絶対にイヤ!」
それをグッと堪える。
「睦…!」
「怒鳴るばっかりで、
まともに話そうともしないじゃありませんか!
そんな人となんか話せません!」
「いちいち逆らいやがる…!」
「そうさせてるのは実弥さんです!」
「なんだとォ」
「実弥さん、私に甘えてるんですか?
私なら何しても大丈夫とか思ってますか?」
「甘えてるだァ?」
「ある人がそう言ってました。
もしほんとにそうなら、…それならいいかなって」
「何だお前、誰に会って来たァ?」
ついに押し負けた私は
部屋の中に1歩、足を踏み入れてしまった。
力で敵う相手じゃない事は百も承知。
それでも、悔しいなぁ。
「誰でもいいでしょ」
「言えねえような相手なのかよ」
「今の実弥さんになんか言いたくないだけです」
「お前いい加減にしろよ」
はぁ⁉︎
「いい加減にするのはそっちでしょう⁉︎
何なんですか⁉︎何でそんなに機嫌が悪いのよ!
私が何したの?それも教えてくれないで
勝手に怒鳴り散らして…
私にどうしろっていうのよ‼︎」
「……いや、オイ、…」
実弥さんは珍しく唖然として
なにも言い返せなくなった。
私がそこまで言ったのは多分初めてだ。
きっと、予想外の事だったんだろう。
「私をイライラの捌け口にでもしてるの?
私なら、何を言っても平気だって思ってる?
傷つかないって思ってるの?
肝心な事は言ってくれないのに
そんなふうに怒られても…」
言いながら、色々思い出してしまって
段々と悲しくなって来た。
ただ呆然としている実弥さんは
私の言葉を否定すらしてくれない。
「何で…」
怒りの勢いがしぼんでいく。
今度は悲しみが私を支配する。