第22章 お兄ちゃんのお見舞い
「ん…?あぁ、悪ィ」
落ち着いた声に、
私が思っていたような事は無いのを確信し
その手に委ねた。
傷痕をそっと指先で撫でられて
私はぞくりと背筋を震わせた。
「まだ痛むか?」
違う、と首を振ると少しだけ笑われる。
甘く震えた事を知られて
気恥ずかしくなり、私は顔を背けた。
「腕もだが、随分と回復してるんだな」
「……そう、かな…」
「睦…?」
私のした返事が曖昧だったからだろう。
宇髄さんは顔を上げ、私の様子を窺った。
「だって…。痕が残ったらどうしよう…」
それが1番心配だった。
体力は戻ってきている。
痛みも引いて来た。
だけどこの醜い傷痕は
随分と長いことそこにある。
もし一生残るような事になれば
私はずっと、あの出来事を忘れられない。
傷痕を見る度に
悍ましい光景が蘇ってくるのだ。
そんな悪夢には耐えられない…。
私の、そんな胸の内に気づかない宇髄さんではなく…
「皮膚の再生はそれなりに時間がかかる。
それでもあの胡蝶が、
傷痕は絶対ぇに残さないと言い切ったんだ。
だからそんなモン残るワケがねぇ」
私の目を見て強く言ってくれた。
「でもまぁ…」
言葉を続けながら、スッと顔を寄せる。
瞬時に反応できない私は
宇髄さんにされるがままになっていた。
「万が一、傷が残ったとしてもだ。
俺がその悪夢を忘れさせてやるから」
患部に囁くように唇を寄せ、
今度は生温かい舌が、傷をなぞる…
びくりと肩が跳ねて
「や…宇髄さん!」
咄嗟に彼を押しやった。
「何だよ。それを心配してたんだろ?」
「それは、…そうだけど」
「お前を愛してるって言ってんの。
どんなんだろうが、好きだから。
嫌な事は全部、俺が忘れさせてやるから
余計な不安抱えてねぇで笑ってろ」
責めるような口調なのに、優しく微笑まれて
私のちっぽけな不安は熱に溶けて行く。
「宇髄さん…」
「んー?」
夜着をきっちり直してくれながら
軽く返事をする。
そんな気の抜けていた彼に、
「今夜、ずっと抱いていてくれますか…?」
曖昧な爆弾を落としてみる。
その直撃を受けて、
これでもかと目を見開いた宇髄さんは、
「お、前さぁ、言い方気ィつけろよ?」
呆れたように窘める。